黒猫戯曲 | ナノ


いち





 ざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざくざぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさぐさ ぐさ ぼき


 あ、れ、ナイフの先っぽ折れちゃった。
 もう使い物にはならないみたい。
 それと目の前のこの人ももう動かない。もう動きそうにない。
 きっと死んじゃったんだ、ううん、わたしがころしたんだ。

 わたし、が ?


 身体がべたべたして気持ち悪い、いつの間にか全身真赤だ。
 こういうのって血化粧って云うのかな、血糊じゃない本物の、ああ逆に作り物みたい。
 気持ち悪いけどちょっと綺麗だなんて、わたし、赤い色が好きだったっけ。


 へんだな、、パパとママが動かない。
 いくら声をかけても揺すっても二度と動きそうにない。


 だって殺されちゃったんだ、わたしがいっぱい、一杯刺してやっと殺した男に、同じように刺されて、ぐちゃぐちゃになって。
 酷いことしてくれるよね、知らない人のくせにわたしの、家族をころすなんて、ひどいよひどいひどいひどいひどいひどいひどすぎる。
 もう見る影もないじゃないか、見る影もないのはきみも同じかな、真赤だよ、きみ、ねえ。

 心臓を抉り出されて、脳漿をぶち撒けられて、まるで人間じゃないみたいな、わたしを生んだはずのふたり。
 内臓がはみ出て、流れた血が部屋中を汚す、わたしを生んだはずのふたりを殺した誰か。


―――どうしよう。

 部屋が血で汚れちゃったし、二人は死んだ。わたしのパパとママを殺した人もわたしに殺された。こういう時はどうするんだっけ、警察を呼ぶんだっけ、どうするんだろう。
 わたしの行動はきっと正当防衛、そう、正当防衛だから牢屋に放り込まれることはないでしょう。


 そのうち誰かが通報して警察がきて処理してくれるだろうから。
 ねえねえわたしは悪くないよね。わたしは悪くないよね。
 だってパパとママをころしたひとをわたしがころして仇をうったの。
 わたしはわるくない。
 わるくない。
 わるくない。
 わるくないから。
 何をしてもいい。

―――なにを、しても。

 パパとママがゆるしてくれるから。

 わたしは。


 わたしは悪くない。
 だってパパとママがわたしに優しいから世界も同じように優しくて優しいの。


(世界は何て楽しいんだ!)
(そしてわたし は、)






 こ わ れ た 。



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