「そっか…ホーネッツ移籍しちゃうんだね」

「ああ」


俺はこのホーネッツを去る。
つまり、ホーネッツのトレーナーをしている恋人、名前とも離れることになる。


「寂しく、なっちゃうね」

「…新しい捕手が入るだろ」

「そうだけど…やっぱり寂しいな」

「…そうか」


名前の目は若干潤んできている。


「あたしはホーネッツ、キーンとは敵だね」

「……」

「…離れ離れ、だね」

「…」

「、向こうに行っても頑張って!」


最後ににこりと笑う名前。
涙が溜まった瞳からは、流れない。


「そのことで、話がある」

「…移籍のこと?」

「俺と、一緒に来てくれ」

「……え?」


名前の目が丸くなる。
呆然とする。


「あ…あたし、ホーネッツの、」

「だから、トレーナーを辞めてくれ」

「な…!?い、嫌だよ!」

「…」

「何であたしが仕事辞めるの?着いてく為に辞めるなんて、そんなの…」

「じゃあ、寿退社してくれ」

「は?」

「結婚しよう」


名前が固まった。
ポカンとしている。


「…い、意味、分かってる…?」

「他に意味があるのか?」

「だっだって!急に…結婚、とか」


急に?


「急じゃない。ずっと考えていた」

「な、ずっとって…」

「きっかけを探していただけだ」


そう。
きっかけを探していただけ。
たまたまタイミングが今だっただけだ。
ずっと、準備はできていた。


「俺は移籍する。だが名前を置いてはいけん」

「…」

「だから元々連れて行くつもりだった」

「え…」

「だが俺に着いていくから辞めるのが嫌なら、俺と結婚して辞めてくれ」

「…!……結婚…」

「ああ。俺にはお前しかいない」


頼むから、嫌だなんて言わないでくれ。


「結婚しよう」

「…、……ずっと…愛してくれる?」

「ああ。ずっと名前だけを愛してやる」

「…こんなあたしで、いいんなら…喜んでっ」


俺は名前をギュッと抱きしめた。
名前はゆっくりと俺の背中に腕を回した。


「愛してる」

「…あたしも」


俺と名前はゆっくりキスをした。



寿退社します

絶対絶対幸せにしてね!

当たり前だ。

…浮気しないでね?

するわけないだろ。

……うん。

名前が別れたいと言っても別れないからな。

…うん!




 
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