「はあ!?風邪!?」

「三人揃って39度越える高熱らしいよ」

「マジか!!」


俺は生徒会長の安形惣司郎。
今日は珍しくやる気を出さないと帰れないんじゃないかってくらい、仕事があった。
でもまあ五人掛かりでやりゃあ日が暮れる頃には終わるだろう、という俺の予想は大きく外れた。
何故なら、全5人の生徒会メンバーのうち3人が風邪を引いて欠席だからだ。


「どうすんだよ、今日の仕事!」

「とりあえず今日中に提出しなきゃいけないやつを優先してやるしかないね」

「くっ…、俺も休めばよかった…」


ボソリと溢せば、道流に睨まれた。
お前貴公子じゃねえのかよ…貴公子が睨むなよ…


「ふふん、安形。僕に任せて!安形が確実にやる気が出る状況をつくるから!」

「は?」

「じゃあちょっと出てくる」

「え、おい!」


仕事もそこそこに、道流は生徒会室を出ていってしまった。
何だ?俺がやる気を出す状況って…
サーヤか?
…っていうか、それなら最初から連れてこいよ…。


「クソ…」


この忙しい時に出ていくなよアイツ。
道流に心の中で悪態をついていたら、道流が帰ってきた。


「安形ただいまー」

「どこ行ってたんだよ道流…」

「おじゃまします…」

「この忙しいとき……ええ!?楢崎!?」


何で!?
道流は俺がやる気を出す状況をつくるって…確かにやる気は出るけど!
でも同時に緊張して今なんか気持ち悪い…


「な…何で楢崎が…」

「僕が呼んだんだ」


そりゃあそうだろうよ!
っていうかそうじゃなかったらおかしいだろ!


「…お手伝いしてほしいって頼まれて…」


いや、生徒会でもない楢崎に手伝ってもらえる仕事なんて…
それこそ雑用とかしかない。
そんなこと好きな女にやらせられるはずがない。何考えてんだ道流。


「ミーシャちゃん、お茶淹れてくれるかな?」

「あっはい!」

「じゃ、僕はこれ先生に提出してくるから」

「「え」」


じゃあね〜、と道流は出ていってしまった。ウインク付きで。
え、道流、え?嘘だろ?出てった?
じゃあ、今…楢崎、と、二人っきり、に……。


「……」

「……」


…気まずい……!!
確か今日ってちょっと暑かったよな?全然暑くねえぞ!
窓開いてるよな?風吹いてるよな?
…落ちつけ…落ちつくんだ俺…。


「お…お茶です…」

「お、おお。サンキュー」


楢崎は律儀にさっき道流に頼まれたお茶汲みをしていた。
自分はそのまま来客用に置いてあるソファに座った。
楢崎が口をつけたところで、俺も一口飲むことにした。
ごくり、とお茶が喉を通る。


「…うめぇ……」


さらり。
何にも考えず、さらりと口から出た言葉だった。
いや、本当にうまい。
楢崎はスケット団でいつもお茶を入れてるのか?


「…ありがとうございます!」

「えっ、あ、おう」


いきなりお礼を言われて、どもった。
一体何のお礼なのか、俺にはサッパリだったが。
それでも、今はすっげぇ幸せな気分だ!


「(…むしろ、仕事進まねえ…)」







 
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