09:25 官兵衛「今日は小生の誕生日だ、去年はちょっとばかりしくじって色々あったが、今年は同じ轍は踏まんからな。他の連中が祝いに来るのをどっしり構えて待つとするかね」 10:25 三成「冬祭合わせの早期割引の期日まであと幾日だ、刑部……」 大谷「あと10日よ」 三成「10日……だと……だが、私は必ず間に合わせてみせる!!」 大谷「その意気よ、三成。ぬしならばそれも叶おう」 官兵衛「……これ見よがしに忙しそうにしやがって……小生の誕生日どころじゃないってか」 11:25 家康「……準備はいいか?忠勝」 忠勝「……!!」 官兵衛「……お前さんたち、これからどこか行くのか」 家康「ああ、昨日文が来て、元親が近くまで船を出してるらしくてな」 官兵衛「そうか……だが出かける前に何か言うことはないか?」 家康「?? いってきます、か?」 忠勝「……!!」 官兵衛「……」 12:25 官兵衛「(……ま、去年もあいつらぎりぎりまで隠して、どっきり誕生会を計画してたしな……今年はまだ隠す気なのか……? まったく、どいつもこいつもいい年してガキみたいなことを)」秀吉「……官兵衛よ、先刻からにやついているが昼餉はそれほどに美味か?」 13:25 官兵衛「今年は何を企んでんだ?もうそろそろネタを明かしてもいいんじゃないか?」 半兵衛「黒田君、見ての通り今は重要な書状を作っているんだ。気が散るから出て行ってくれないか」 官兵衛「……え、ま、まさか……お前さん本気で忘れて……」 半兵衛「いい加減にしたまえ、摘まみ出されたいのかい」 14:25 官兵衛「……そういえば北条殿も、文や贈り物を寄越してこないな……去年は、風切羽が届けておいてくれたんだが……もしかして、小生が日を間違えてるのか?? 明日か?来週か?来月か? ……いや、今日が小生の誕生日で合ってる……よな?」 15:25 官兵衛「……な、なあ、三成。原稿に追われてるところ悪いが、お前さん今日が何の日かは知っているか?」 三成「……?」 官兵衛「三成……?」 三成「……貴様は、誰だ?」 官兵衛「は?」 三成「名もなき雑兵が私を遮るな!」 官兵衛「……お前さん、徹夜続きで頭いっちまったのか?」 16:25 官兵衛「……痛ぇな……あの馬鹿、思い切り鞘で殴りやがって……」 大谷「ヒヒ、機嫌の悪い三成には逆らわぬことよ……新入りのぬしにはよい勉強ともなったであろ」 官兵衛「……新入り?お前さんまでなにわけわかんないこと言ってんだ」 大谷「……やれ、これは随分と生きのよい新兵よなァ」 17:25 官兵衛「権現、戦国最強、お前さん帰って来たのか!」 家康「権現? そんなふうに呼ばれたのは初めてだな。ワシは徳川家康だ……お前は見ない顔だが、誰かの客なのか?」 忠勝「……??」 官兵衛「なんでお前さんたちまで、そんなこと言うんだ。新しい嫌がらせか?流行ってんのか!?」 18:25 秀吉「うむ……官兵衛、というのか。我が友の名と音が似ているが、随分と違うものよ」 官兵衛「あ、ああ……(……やっぱり初対面の反応なのか……刑部はまだしも、他の連中はとても冗談で言ってるように見えん。小生の誕生日どころか、小生のことも忘れちまったのか……?)」 19:25 官兵衛「……色んな奴と話してみたが同じだった。大坂城にいる連中は誰も小生を覚えていない……一体何が起きているのかわからんがな……。半兵衛は部屋に引きこもってて仕事が終わるまで話せそうもなかったが……当然あいつも……畜生、なぜじゃ」 20:25 官兵衛「……半兵衛、書状は書けたか」 半兵衛「……君は」 官兵衛「っ、言うな。お前さんにまで“初めまして”なんて言われた日には、流石の小生も泣くぞ!?年を重ねたばかりだってのに、大人気なく泣いちまうぞ!? ……ううう」 半兵衛「……もう既に涙目のようだけど」 21:25 半兵衛「よくわからないけどね……書状は書き終えたとはいえ、僕の仕事は他にもたくさんあるんだ。あまり時間を無駄にするわけにはいかないから、君には一言だけ言わせて貰うよ」 官兵衛「……なんだよ……」 半兵衛「……誕生日、おめでとう」 官兵衛「……半兵衛……」 22:25 官兵衛「……ん……はん、べ……」 忠勝「…………!!?」 家康「官兵衛が、熱に魘されながら半兵衛殿の名を……?」 三成「……官兵衛ごときが不遜にも程がある……目を覚ましたらその性根を叩き直してやる」 大谷「ヒヒ……年の数だけ打ちすえるがよかろ」 23:25 官兵衛「……」 半兵衛「静かに寝てる。熱が引いたかな」 秀吉「うむ。よもや誕生日に熱を出して倒れるとは、今年も宴席は無駄になったか」 半兵衛「まったくだね。日持ちする料理だけ分けておいて回復したら食べさせてあげようか――黒田君、誕生日おめでとう。そして、おやすみ」 →BACK |