唐突に現れてそう宣言すると、官兵衛は秀吉の目の前でばさりと夜着を脱ぎ捨てた。 忙しなく下穿きを解くと、躊躇う素振りもなく素っ裸になり、ドカッと褥の上に座ると、さあ好きにしろとばかりにふんぞり返って秀吉を見つめてきた。 主の床に侍るにしては随分と態度が大きい上に色気の欠片も感じさせない。 「代理と言うが、半兵衛はどうしたのだ? 我は何も聞いておらぬが」 「さてね、刑部に呼ばれていたようだが、詳しくは知らんよ。あいつも色々忙しい男だからな、わざわざ引き留めて聞くのもなんだろう?」 「そうか……」 確かに半兵衛は多忙な身だ。いつも一人で何人分もの仕事をこなしているように見える。夜伽などよりよほど優先することは幾らでもあるのだろう。 だがそれだけで官兵衛がこんなにも開き直ったような顔で体を差し出して来るというのは不自然に思えた。 官兵衛の腹の内には何かあるのでは、と思えて仕方がなかった。 ならばここは一つ探ってみるか―そう考えて秀吉は口を開いた。 「うむ……お前一人で我の相手をしようというのだな。我は構わぬ。しかし、先日は興が乗るまで及び腰と見えたが今日は何故それ程はりきっているのだ?」 「奴の居ぬ間に一つ、お前さんを寝取ってみるのも面白そうだと思ってな」 しれっと口にしたそれが本心なのかどうか。確かめるには体に聞くがてっとり早い。 「……よかろう。官兵衛、その体をもって我を魅了してみせるがよい」 言い放つや否や官兵衛の両肩を掴んで思い切り、容赦なく後方へ押した。 「な……うわっ……!?」 褥に仰向けた官兵衛の頭の横に両手をつき、その顔を覗き込んだ。 「ちょ、待て……いきなり過ぎるだろ……! もう少し順序ってものを考えてくれんかね!」 官兵衛は激しく動揺しているようだった。 先日の秀吉はほとんど座した状態で動かず、ただ二人が動くに任せていた。 その様子から判断し、秀吉がいきなり組み敷くような行動を取ることは予想していなかったのだろう。 実際秀吉も、普段の半兵衛との行為で最初からこのような状態に持ち込むことはまずしない。 だが、あえて今はまるでそれが当たり前であるかのように振る舞うことにした。 「半兵衛の代わりを務めるのであろう? この程度で動揺するようでは話にならぬ」 「な……んんっ」 何か言おうとした唇を無理矢理塞ぎ、蹂躙するように内を貪った。 「ん……ふッ」 かなり苦しいのか、闇雲に秀吉の体を叩いてやめろやめろと執拗に訴えてくる。だがそのような抵抗など秀吉にとって蚊が刺すほどのものでしかなかった。 気にも留めることなく、ただ執拗に口腔を攻め続ける。 「っ……ふあ……っ」 ようやく口を解放した時には、乱れた髪の間から覗く双眸がすっかり潤んでいた。 見ていて気の毒なほどだったが、ここで手を緩めるつもりなど毛頭ない。 一度ぐったりした官兵衛を解放し、体を起こす。 茫然としたまま肩を上下し、とりあえず息を吸うことに必死な官兵衛は秀吉の顔が自分から遠のいたことに一瞬ほっとした様子だった。 しかし次に秀吉が取った行動に、再び激しい動揺を示すこととなった。 「なっ、やめ……おい……!?」 ★戻る★ ★Topへ戻る★ |