ほどよいおんど
『桜が…綺麗ですね…』
「まぁあれはボケ桜ですがね」
『風が…気持ちいい…』
「まぁ僕からしてみれば強すぎますけどね」
『あのさぁ、さっきから骸くんさぁ、なんなの』
「なんなの、って。ただ僕は事実を言ったまでですが、」
『事実?え、普通に桜綺麗じゃん。風気持ちいいじゃん』
「いいですか、ここらの桜はまだ咲いてません。このままでは入学式にも間に合わないでしょう。そして風、これは少し…いえ、大分強すぎます。だってドラム缶が」
『ドラム缶?は、なにそれ』
「え、だって見てくださいよあれ。ドラム缶が」
『飛んでないよ』
「いやいや明らかにあれは飛んで」
『ないよ』
「間違いなく飛ん」
『飛んでないってば』
「……そうですか」
『はい』
「はい」
『…あったかいね、骸くん』
「とか言いながらあなた震えてるじゃないですか」
『あったかいからだよ』
「震えているのに?」
『うん、そう』
「…上着貸しましょうか?」
『……ありがと』