『姫の王子様』庸ちゃん×お兄ちゃん P2
「タマッ!!おい!どけよっ」
庸介は拓朗を突き飛ばした。
拓朗は力なく床に倒れこんだまま動かない。
庸介は服を直しながら起き上がるとうな垂れている拓朗を見た。
「一体何なんだよ」
「お前…責任取れるのかよ。あいつは…あいつはまだ高校生なんだぞっ!」
「責任…ってお前話聞いてたのか?ったく大げさな奴だな…今時の高校生ならそれくらい普通だろ」
話を盗み聞きしていた拓朗に呆れながらもそんな行動に出てしまう真意を十分理解しているだけに責める事はない。
「それにちゃんと病院で処置してもらう方が安心だろ。今からタマ連れてくからな。帰って来たら夕飯どっか食いに行こうぜ。久々に中華ってのもいいかもな」
拓朗の肩をポンポンと叩くと立ち上がった。
「…ったくタマの奴もなんか変な顔してたし」
庸介は頭を掻きながら携帯を取り出した。
お前達兄妹のお守り役じゃねぇんだぞと愚痴りながら珠子を掴まえるために電話を掛けた。
「おい…」
「なんだよ。中華は嫌だったか?じゃあパスタにするか?」
「処置って何だよ!お前っ珠子の事誰よりも大事だって言ってたじゃねぇかよ!何だよ!お前もう飽きたのかっ!?」
ドンッとタックルを決められた庸介はまた床に押し倒された。
持っていた携帯は手から離れ宙を舞い腰を激しく床に叩きつけられた。
「イッテェ…」
「さっきから大きな音がしてるけど大丈夫…?」
一階にいた母の睦美が心配そうな顔で部屋を覗き込むと表情が凍りついた。
息子の拓朗が庸介を押し倒して足に抱き着いている。
おまけに泣いたと分かる赤い目をして辛そうな顔をしている拓朗を見て青ざめた。
「お、お兄ちゃん…あなた…」
「あ…睦美さん」
庸介は強く打ち付けた腰をさすりながら顔を上げた。
「庸介くん…珠子はこの事を知っているの?」
「はい?」
「珠子はまだ子供だけど本当にあなたの事を好きなのよ…」
「俺だって好きで…」
「オイッ!好きならどうして責任を取らないッ!珠子を弄んでボロボロにするつもりか…お前は今まで俺を騙してたのか…」
拓朗は庸介の胸倉を掴んで激しく揺さぶった。
状況が飲み込めない庸介は揺さぶられるままに大きく体を揺らした。
睦美は複雑な表情で二人を見つめている。
「庸介くんいつからなの?いつからそういう関係なの?」
「珠子を傷モノにしやがって!見損なったぞっ!!」
睦美と拓朗が同時に口を開いた。
分けも分からず責め立てられた庸介は我慢出来ずに拓朗を蹴り飛ばすと大声を張り上げた。
「ちょっと待てぇぇぇぃ!!」
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