『いつかの夏へ』
6
「ウッウッ…」
体が揺さぶられるのを感じて意識が戻ってくる。
ぼんやりとした意識の中で下半身に違和感を感じた。
「…ヒィッ」
今井さんの体が私の上に覆いかぶさっている。
目を開けた私に今井さんが笑った。
「真子ちゃん、処女じゃないんだね。あの男とヤッってるんだ」
「イ、イヤァァァーーーッ!!!」
私は力いっぱい突き飛ばした。
それでもビクともしない今井さんの体が震えた。
「もう…遅いよっ」
「離してぇぇっ!」
激しく抵抗したのも空しくその行為は終わりを告げた。
何回か強く突き上げられると体の上の重みが消えた。
「真子ちゃんがいけないんだ。僕の気持ちに気付かないから」
今井さんの声が遠くでしているような気がした。
何を喋っているのか聞き取れなかった。
耳鳴りがひどくて体中が痛い。
口の中が血の味でいっぱいで鼻の奥もツーンとする。
血がどのくらい出ているのか確認したくても指の一本さえも動かせなかった。
「…ごめん」
小さく謝る声がした。
私は真っ暗な空を見上げながら車の走り去る音を聞いた。
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