『拍手小説』
も1-2

『君の味』


「ん〜〜もう食えないー」

 陸は箸を置いて腹を撫でてた。

 少し遅めの昼食を取っていた陸はとてもこれが朝昼兼用の食事とは思えないほどの見事な食べっぷりだった。

 好物ばかりを用意した食卓に陸は目を輝かせた。

 中でもハート型のハンバーグには目をキラキラさせた。

「麻衣の作るものは何でも美味しいなぁ〜」

「ありがと。それにしてもその細い体のどこにそんなに入ってくのか不思議」

「俺って大食い?」

「んーそこまでじゃないけどね。でも作る方としてはその食べっぷりは嬉しいよ」

 向かい側に座る麻衣が微笑む。

 麻衣と一緒に暮らすようになってから外食の回数はかなり減った。

 偏食だった食生活も少しだが治って来ている。

「麻衣の料理はやっぱり美紀さんに教えてもらったの?」

「ううん。本格的に自分でやるようになったのは一人暮らし始めてからだから」

「じゃあこれが麻衣の味かな」

「ん?」

 陸の言葉に麻衣は首を傾げた。

「家庭の味ってやつ?俺にはそういうのはほとんどないから麻衣の作る料理が俺の家庭の味かなって」

「陸…」

 少ししんみりした表情の陸に麻衣は立ち上がると陸の後ろに立った。

 後ろから手を伸ばして陸にもたれた。

「やっぱり男は胃袋で掴めって当たってるのかも!」

 麻衣が笑いながら言うと陸は顔を上げた。

「んー?じゃあ俺の胃袋は麻衣に掴まったのか?」

「そうだよ。もうガッチリ掴んじゃったんだから」

 麻衣は陸の胃の辺りに掴む真似をして手を伸ばした。

 陸がクスクスと笑うと麻衣も笑顔になった。

end

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