『君の隣』
 第二章 P37


 ドアノブに手を掛けてゆっくりと廻しながら押した。

 開けるとドアの隙間からベッドに寝転がっている貴俊の足が見えた。

 心臓がドクンと打つ。

 祐二は笑顔を作ると勢いよくドアを開けて中に入った。

「よぉっ!」

 部屋に入ると手を上げて声を掛けた。

 寝転がってヘッドフォンで音楽を聴いていた貴俊が開いたドアの方を見て体を起こした。

 ヘッドフォンを慌てて外して驚いた顔で祐二を見ている。

「どうした…の?」

 驚きを隠せない貴俊が言葉に詰まりながら声を掛けた。

 いつもだったらそんな貴俊をからかうところだが今の祐二にはそんな余裕はカケラもなかった。

 持っていた鞄を部屋の隅にドサッと置いた。

 貴俊が不思議そうな顔で目で追った。

「明日休みだし泊まっからな!」

 言った!
 
 言ってやった!

 覚悟決めたんだ、いつまでも逃げてんのも情けねぇもんな。

 床に置いた鞄にチラッと目をやる。

 日和から貰ったローションもあの中に入れて来た。

 俺は今日…貴俊に…。

 そう思ったら自然と緊張が高まって体が強張っていくのを感じた。

「祐二、あのさ…」

 貴俊が戸惑った表情で声を掛けた。

「んじゃー取りあえず布団貰ってくっかなー」

 目も合わせられないのを誤魔化すように慌しく部屋を出た。

 閉めたドアにもたれて大きく息を吐き出した。

 やっべーすげぇ緊張した。

 手の平がジットリと濡れているのに気が付いてズボンで乱暴に拭った。

「ビビんな、俺!」

 自分自身に喝を入れた。


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