『君の隣』
 第二章 P27


 チュ、チュッ…。

 祐二の頬を伝う涙を吸い取るように何度も何度も祐二の顔にキスの雨を降らせた。

「ばかっ、くすぐったいだろ?」

 キスしてない所がないほど顔中にキスをされた祐二の表情が緩むのを見てようやく貴俊の体から少し力が抜けた。

「祐二、好きだよ」

「分かってるって」

「好きだ、好きだ、好きだ…」

「お、おいっ…苦しいって!」

 いまだ強く抱きしめている腕の中から逃げ出そうともがいた。

 だが何度も自分の名前を呼ぶ小さな頼りない声が聞こえた。

 貴俊…?

 いつもとは違う貴俊が急に愛しく思えて祐二は貴俊の背中に腕を廻して抱きしめた。

「祐…二?」

 背中に祐二の腕を感じて貴俊が顔を上げた。

「ごめんな。お、俺が…ビビってっから…」

 まだ涙でまつげが濡れている祐二が笑いかけた。

 貴俊はたまらず祐二の唇を掬うように重ねると祐二も応えるように腕を首に廻してしがみついた。

 貴俊の奴…エッチ出来なくてガッカリしてるよな?

 俺だってそれなりに覚悟は決めてたけどあんなに痛いなんて思わなかったし…。

「祐二…口開けて?」

 思考を妨げられたが言われるままに口を開くと自分から舌を出して絡めた。

 二人の沈みきった気持ちも何度もキスをするうちに次第に和らいでいった。

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