『君の隣』
 第二章 P1


 春、高二になってすぐに恋人が出来た。

 その恋人は俺よりも二十センチも高くて、その上勉強は常にトップクラス、おまけにスポーツ万能で生徒会長。

 可愛いなんて言葉からは程遠い誰もが認める男前。

 そう…男前。

 男前って辞書で引いた事ありますか?

 男の中の男だと、振り返ってみられるような…そんな事が書いてある通り、俺の恋人は男の中の男で思わずぽーっと見惚れてしまうような…。

「どうした?祐二」

「な、何でもねぇよ」

 ぼけっと見惚れていた事に気付かれたのが気恥ずかしくて祐二は慌てて窓の外に顔を向けた。

 貴俊はそんな愛しい恋人の顔を見て嬉しそうに笑うと手を伸ばして祐二の手に触れた。

「何してんだよ…」

 祐二は貴俊に手を握られて思わず小声で抗議をした。

 だが貴俊は構わずに祐二の指の間にしっかりと指を滑り込ませるとぎゅっと握った。

「誰も見てないよ」

 恋人の優しい声に祐二は少々抵抗を見せながらもこれぐらいならいいかと貴俊の手を握り返した。

「キスしていい?」

 調子にのんなっ!

 貴俊が身を屈めて小さな声で囁くと祐二はパッと顔を上げて睨みつけると空いてる方の手でパンチを繰り出した。

 間一髪、貴俊はパンチを手で受け止めるとそっちも同じように指を絡めてしっかりと握った。

「はーなせってば」

 口では嫌だと言いながら振りほどこうとしない祐二に貴俊はただただ嬉しそうな顔をしていた。

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