『君の隣』
 第一章 P1


 思い出せる限りの記憶の中にはきまってアイツの姿があった。

 産まれた時から一緒で時に同じミルクを飲み同じように絵本を読み聞かせられ同じように成長していた。

 だから俺とアイツは同じなはずなのに!

 なんで!どうして!

 こんなに違ってしまったんだろう。

「はぁ…」

 全校集会の真っ最中この春高等部二年に進級したばかりの東雲祐二は大きなため息を吐いた。

「ため息なんかついてどうしちゃったのー?」

 後ろからまだ変声期前のような高い声が聞こえてこっそりと後ろを向いた。

 祐二と変わらない身長だがこちらの方が幾分小柄に見えるのはその風貌のせいかもしれない。

 白い肌に色素の薄い瞳はぱっちり二重、ゆるく癖のある柔らかい髪、艶やかなピンクの唇。

「気に食わねぇっての」

 ボソボソと小さな声で呟く祐二に日和は可愛らしく首を傾げたが何の事か検討が付くとぱぁっと顔が明るくなった。

「貴のことぉ?だったら祐も立候補すれば良かったのにー」

 語尾を伸ばした舌足らずな話し方が可愛らしい学校のアイドルこれでも祐二と同じ十六歳、中等部からの友人の菅生日和(すごうひより)。

「俺が当選するわけねーじゃん」

 そう言いながら視線を壇上に移した。

 壇上ではこの春からの生徒会新役員の発表が終わって、これから新生徒会長の挨拶が始まろうとしていた。

 薄いグレーの制服の海の中にただ一人着る事が許されるオフホワイトのブレザーを来た長身の男がゆっくり壇上を歩く。

 圧倒的な存在感。

 誰もがその第一声を待っている中、祐二ただ一人が苦虫を噛み潰したような顔で見ていた。

「生徒会長の篠田貴俊です」

 マイクを通してその声が体育館に響き渡った。

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