『君の隣』
 季節『ある夏の一日'09』 P15 side貴俊


 祐二からのキスなんて数えるほどしかない。

 それだけでも嬉しいのに、今日の祐二は重ねるだけのキスではなく、薄く開いた唇から伸ばした舌で唇を舐められた。

 誘われるままに唇を開くと、柔らかい舌が入って来て乱暴に俺の舌を舐めた。

「ん……っ、ふぅ……ん」

(いつもより、感じてるみたい……)

 動かしている手からはさっきよりも大きな音が聞こえる。

 このままじゃ下着が汚れてしまうだろうと、下着ごとハーフパンツをずり下ろしても祐二は抵抗もしない。

 それどころか腰を持ち上げ脱がしやすいように協力までしてくれた。

「祐二……っ、俺のも……触って」

 キスの合間に我慢出来ずに囁くと祐二の動きが止まった。

 やっぱり今のは調子に乗り過ぎたかもと思っていると、祐二の手が俺の下半身に伸びさっき俺がしたみたいに下着を下げた。

「……っは」

 祐二の手に触れられるだけで声が漏れる。

 すっかり勃ち上がった自身は触れられるだけでも激しい快感を感じられるほど昂っていた。

「貴俊……すげっ、こんな……」

「ん……祐二に、触ってるだけで感じる。でも……祐二に触ってもらうと、もっと……気持ちいいよ」

「俺が……触っても、気持ちいい?」

「祐二だから、だよ。…………ねっ、ごめん……我慢出来ない、動かして? お願い……」

「貴……っ」

 ゆるゆると触れられるだけじゃ物足りなくて、懇願しながら腰を揺らすと祐二は一瞬驚いたような顔をしたがすぐに応えてくれた。

 祐二の手と俺の手の動きがシンクロする。

 互いの性器を愛撫しながら何度もキスを交わし、熱く濡れた吐息を交換するたびに絶頂が近い雫が零れる。

 まだ終わりたくないのに手の動きは止められない。

「貴俊……、気持ちいい?」

「すご……い、いいよ。そんなにされたら先に達くから、少し緩めて……」

 いつになく激しい手淫に音を上げると、祐二の顔がふわぁっと嬉しそうに綻んだ。

「いいよ。達けって……」

「達くなら……祐二と一緒がいい、ね……一緒に、一緒に……」

 こんな風になることなんてなかったのに、切羽詰まった声を上げて手を激しく動かすと祐二に縋り付くようなキスをされた。

 激しく動き回る舌に翻弄されて自然と息が上がる。

「貴っ……あぁっ、んぅ……気持ちい……」

「もっと気持ち良くなって、好きだよ……祐二。誰よりも好きだよ」

「あ、あぁっ……俺も、俺も……好き、好きっ、も……ダメッ」

 祐二の告白を合図に二人は同時に昇りつめる。

 腰が抜けるような絶頂に二人のシャツはドロドロになるほど濡れてしまっても、しばらくは動けずに余韻に浸りながら何度もキスを交わした。

 唇だけでなく顔中に触れるだけのキスをすると、祐二はくすぐったそうに顔を震わせ鼻をすり寄せるような仕草を見せる。

「祐二、すごく良かった」

「ん……」

 蕩けた返事に気が付けば祐二の瞳はトロンとして半分夢の中に入り込んでいるようだ。

「おやすみ、祐二」

 声を掛けながらおやすみのキスをすると、応えるように顎を上げてくれる仕草が可愛い。

 さっき放ったばかりの自身が反応して頭をもたげてしまうけれど、疲れている祐二にこれ以上は無理をさせたくはなかった。

 祐二から小さな寝息が聞こえてくるのを待って、体を綺麗にするために腕を引き抜いてベッドを抜け出した。

「たかぁ……と……」

 小さく名前を呼ぶ寝言が背中に届いた。

 不安に襲われて自暴自棄になりそうな自分を、引き戻してくれる祐二の存在は大きい。

 祐二のために何かしてあげたいなんていつも言うけれど、本当は俺が祐二のために何かしていないと不安なだけなんだ。

 側にいたいんじゃなくて、側にいて欲しいと願っているのも自分。

 暑い夏の一日が俺に教えたのは、強いフリをした弱い本当の自分。

 何があっても祐二を守れる強さを身に付けたい、どんなことがあっても揺るがない強さを手に入れたい、幼い寝顔の祐二を見つめながら気持ちを新たにした。

end

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