報告!オカマが釣れました!!



「お腹すいた〜。何もねえの?」


「うるせえな〜。イヴ、お前も釣りしろ、釣り」


そう言いながら、釣り糸を垂らしたまま、船長がもう一本の釣竿をオレに向かって投げた。
しかし船長がエサを食べてしまったものだから、釣れるわけがない。


「だいたい、サンジ君がきちんと配分してた食料をあんたたちが食べたのがいけないんでしょうが」


「そーだそーだ」


ナミに同感。
腕を上げて便乗したら、あんたも食べてたでしょうが、とナミの鉄拳。


「いてて…それより驚きだな〜。王女様が海賊と一緒にいるなんてさ」


ビビがいる船内に目を向けると、ナミも小さく頷いた。


なんとビビはアラバスタ王国ってところの王女さまで、そこを乗っ取ろうとしている秘密犯罪会社B・Wを止める(船長曰く、ぶっつぶす)ために、この船に乗ってるらしい。
ビビ自身もB・Wで王国側のスパイとして働いてたけど、バレて殺されそうになっていたところをこの一味に助けられたと教えられた。


「急がないと……B・Wの計画は本格化し始めてるわ」


ナミが風に揺れるオレンジ色の髪を押さえつけながら、船内へ。
それと入れ替えに、ビビが顔を出した。


「ルフィさん、ウソップさん、何か釣れ……カルーーーーー!!!」


おおぅ。
エサがなくなった船長とウソップがカルーをエサ代わりにして使ってます。
そりゃビビも怒るわな。


「もう…!イヴさんも見てないで止めてよね!!」


「あー、悪い悪い。ところでさ、ビビ。あれなんだと思う?」


「え?」


海面から立ち上ってる煙。まるで雲みたいだ。
それを見たビビが慌ててナミを呼びに行ったけど、どうやら問題ないらしい。


「ただの蒸気だから。ホットスポットよ」


「ホットスポット?」


「マグマができる場所のこと。あの下には海底火山があるのよ」


「海底なのに火山なのか?」


チョッパーの言葉に、ナミは頷いて話を続けた。


「こうやってね、何千年何万年後、この場所には新しい島が生まれるの」


「ナミさん素敵〜」


サンくんが体をくねくねさせながらナミの周りを回っている間に、船はその蒸気の中へ。
うお、真っ白だ。


「硫黄くさっ!!」


「我慢して、すぐ抜けるから」


騒ぐ船長の声と、誰かのお腹がなる音。……オレのか。
ナミの言ったとおり、すぐに船は蒸気から抜けた。


「…………」


「…………」


しーんと静まり返る一同。
船長とウソップが垂らしていた糸の先。カルーには、なんとも不気味なオカマが抱きついていた。


「「「オカマが釣れたああああああ!!!」」」


オレたちが絶叫すると、オカマはびっくりしたように両手を離して、海の中へ。


「……上がってこねえな」


「…なあ、オレ思ったんだけど、もしかしなくてもカナヅチなんじゃないか?」


「「………イヴ行けええええ!!!」」


「オレかよおお!!??」


いつまでたっても上がってこないオカマを見てたら、後ろからいきなり船長とウソップに突き落とされた。
どうやら助けて来いって意味だろうけど…やり方がひどすぎるだろ!!


そして沈んでいたオカマを救出して甲板にあがると、なぜか船長とウソップの顔が腫れていた。
その横には、拳を握っているナミの姿。………なにがあった。











「いやースワンスワン。見ず知らずの海賊さんに助けてもらうなんて、この御恩一生忘れません。あと暖かいスープを一杯いただけるかしら」


「ねえよっ!!」


どーんと正座をして頭を下げるオカマに、ゾロが叫ぶ。
なんで背中に白鳥がついてんだろ…。そしてなぜ誰も突っ込まない?


「お前泳げねーんだな」


「そうそう。あちしは悪魔の実を食べたのよう」


船長の言葉に頷くオカマ。やっぱカナヅチだったか。
ビビにもらったバスタオルで髪を拭きながら、みんなの話に耳を傾ける。


「何の能力なんだ?」


「そうねい。じゃああちしの迎えの船が来るまで慌ててもなんだしい、余興代わりに見せてあげるわ」


そう言って、オカマがよっこらせ、と立ち上がった瞬間。
一番近くにいた船長の顔を殴り飛ばした。


「!!」


「船長!?」


すぐに戦闘態勢に入るゾロ。
だけど殴った当の本人であるオカマは、刀を抜きかけたゾロに両手を広げてみせた。


「待―って待―って待―ってよう。余興だって言ったじゃなーいのよー!!」


「なっ…!?」


「え…!?」


そのフザけた声に、ゾロが目を見開く。
そこにあったのは、オカマの格好をした、「船長」の顔。


「ジョ〜〜ダンじゃなーいわよーう!!」


「はっ!?おれだ!?」


起き上がった船長もポカン。
その前で、「船長」は楽しそうにくるくると回っている。


「びびった!?これがあちしの食べたマネマネの実の能力よーう!!左手で触れば、ホラ元通り」


ぱっと「船長」の顔が、さっきのオカマの顔に戻る。
声も、体格まで一緒だった。


「す、すごいな」


「ええ…」


隣のビビも唖然としている。



そしてそんなオレ達の前で、オカマはウソップ、ゾロ、チョッパー、ナミの顔をマネて見せた。
右手で顔に触れさえすれば、どんな顔だってマネできるらしい。ちなみに体型や声も。


「お前すげーなー!!」


「もっとやれー!!」


オカマを煽ぐ船長、ウソップ、チョッパーの3人。そしてそれにノリノリのオカマ。
過去に触れた顔は決して忘れな〜い、なんて言いながら、さらに顔を変えてみせるもんだから、船長達は大はしゃぎ。肩を組んで踊り始めた。


「おーいイヴ!お前も来いよー!!」


「いや遠慮しとく」


なんでオレが不気味なオカマと肩組んで踊らないといけないんだ。
オレが断ると、なんだお前ノリ悪いなー、という声が返ってきた。


「っ…」


「……ビビ?」


その時、オカマを見ていたビビの顔が強張った。
どうしかしたのかたずねようとしたとき、海の方を見てたナミが叫んだ。


「ねえ!あれ、あんたの船じゃないの?」


指差す方には、一隻の船が。猛スピードでこっちに向かってくる。


「アラ!もうお別れの時間!?残念ねい」


「エ゛――――!?」


ガーンという効果音つきでオカマを見る3人。
そんな3人の声に、オカマは背を向けたまま言った。


「悲しむんじゃないわよう。旅に別れはつきもの!!でも、これだけは忘れないで。友情ってヤツァ…付き合った時間とは関係ナッシング!!」


……いつそんな固い絆が生まれたんだお前ら。
1人つっこみを入れるオレの前で、涙を流しながら手を振る3人。
そして自身も涙を浮かべていたオカマは、ちょうど横についた船に、軽々と飛び乗った。


「さあ!!行くのよお前たちっ!!!」


「ハッ!!Mr.2ボン・クレー様っ!!」


「「!!??」」


「Mr.2!!??」


響いた声に、みんなが一斉に走り去っていく船を見る。
なんだ、一体…?


「あいつが……!!」


「ビビ、お前顔知らなかったのか!?」


ビビの顔が真っ青になる。
力なく座り込んだビビが、震える声で言った。


「ええ…私、Mr.2とMr.1のペアには会ったことなかったの。能力も知らないし…。噂には、聞いていたのに……。大柄のオカマでオカマ口調、白鳥のコートを愛用していて背中には“オカマ道”と…」


「「「気づけよ」」」


ビシッとつっこみ。今のまんま、その噂通りだったじゃんか。
すると、そのつっこみはスルーで、ビビは頭を抱え込んだ。


「あいつの見せた顔の中に…父の顔があったの…。あいつ一体…父の顔を使って何を…!?」


ああ、なるほど。
さっきの表情はそれが原因だったのか。


「んー…あれだけマネできるんだったら…当然、一国の王様になりすますことも可能だよな」


「ああ。よからぬこともできる」


オレの言葉に、ゾロが頷く。
顔だけじゃなく、声も体型までもマネできるんだったら、能力を知らない奴なら簡単に騙せる。


「確かに…敵に回したら厄介な相手よ。この中の誰かに化けられたりしたら、仲間を信用できなくなる」


「そうか?」


船長の間の抜けた声に、え、とみんなの動きが止まる。どうやら危機感が全くない様子。
仕方なくナミが説明しようとしたら、ゾロがそれを止めた。


「まあ待てよ。確かにこいつの意見にゃ根拠はねえが……今あいつに会えたことをラッキーだと考えるべきだ。“対策”が打てるだろ」


にやりと笑うゾロ。
確かに、ゾロの言う通りかもしれない。しれないんだけど…さ。


「えーっと、質問」


「あ?」


「Mr.2って何?」


「………」


みんなの視線が集まる中、風に飛ばされたバスタオルが、船内から出てきたサンくんの顔に命中した。


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