麦わら海賊団




「こいつはイヴ!違う世界から来たらしいぞ!面白いから仲間にする!」


「面白いってお前……」


ルフィの言葉に困ったような顔をする長っ鼻くん(名前わからん)。
そしてその横に立ってオレを見る人たち。


「ルフィさん、違う世界ってどういう意味?」


綺麗な青い髪をした女の子がルフィを見ると、ルフィはんー、とかなんとか言いながらオレを見下ろした。


「どういう意味だ?」


「「知らなかったんかい!!」」


オレの突っ込みとオレンジ色の髪をした女の子の突っ込みが綺麗にハモった。


「ったく……で、イヴ、だっけ?あんたどこから来たの?」


ルフィに鉄拳をお見舞いしたオレンジちゃん(とりあえず)がオレを見る。


「……リゼンブールからです」


「リゼンブール?聞いたことないわね…」


いや、だから違う世界なんだってば。
そう言おうと口を開きかけたとき、チョンと足元に何かが当たった。

下を見ると、小さな生き物が。
赤い帽子に角が生えている。


「………ぬいぐるみ?」


「ぬ、ぬいぐるみじゃないぞ!!オレはれっきとしたトナカイだ!!」


おおぅ、しゃべった。
トナカイなのか…。


「へぇ…この角、本物?」


「な、なんだよ!本物じゃ悪いのかよ!!」


「いや別に悪くなんかないけど」


見た目可愛いのになんだか喧嘩腰だなコイツ。
オレは角を触ろうとして伸ばしかけた手をひっこめた。
そして、改めて周りの人たちを見る。


「えーっと……オレはイヴ・シナーズ。ついさっきこの世界に来ました。先に言っておきますけど、仲間になるとは一言も言ってません」


わざとらしいぐらい丁寧に頭を下げてみる。


「なんで。仲間になればいいじゃねえか。どうせお前、行くとこないんだろ?」


「う……そ、そうだけど…!会ってすぐ、仲間になれといわれてもだな…」


オレよりルフィの身長の方が高いから、自然と見上げる形になる。真っ黒な瞳と視線がぶつかって、思わず目をそらした。


「いいだろ。オレ、お前のこと気に入ったし!!決まりだな!!」


「…………」


眩しいくらいの笑顔でオレの頭を満足げに撫でてくるルフィ。
どうしてこんなに強引なんだ。




でも……確かに、オレはこの世界の人間じゃないから行くところはない。元の世界に帰る方法もわからない。
それなら、その方法が見つかるまで、“仲間”になったほうがいいかも。


…………仕方ない。生きるためだ。別にこれは、飴あげるからついといでって言われてついていく子供みたいな展開じゃないからな。




「………じゃ、じゃあ…よろしく、お願いシマス」


本日二度目の低頭。



そしたらパンッとオレンジちゃんが両手を叩いた。


「なんだか急すぎて頭がついていかないけど……とりあえずよろしくね。あたしはナミ!この船の航海士よ」


向日葵のような笑顔のナミ。


「オレはウソップだ!よろしくな、イヴ!」


きらーんと効果音が聞こえてきそうな決めポーズをする長っ鼻のウソップ。


「ロロノア・ゾロだ」


不機嫌そうな、それでもさっきよりは穏やかな口調のマリモ……じゃなくて、ゾロ。


「オレはトニートニー・チョッパーだ。この船の船医だからな!お前も怪我したら言えよ!!」


えっへん、と胸を張るトナカイのチョッパー。医者って…すごいな。


「私はビビ!よろしくね、イヴさん。それから、この子はカルーよ」


「クエ!」


青い髪をしたビビと、でっかい鳥(だよな?)のカルー。


「俺はサンジと申します。よろしく、イヴちゃん」


立てひざをついてオレの手をとる黒スーツのサンジ。料理人というから驚いた。

そして―――



「オレが、この船の船長だ!」



一味の船長、ルフィ。







それぞれが自己紹介を終えたら、ルフィは船首へと移動した。


「よぉーしっ!!野郎ども、出航だあー!!」


真っ青な空に力強く拳を突き上げるその姿は、まさに、船長。


(……エド)


どこか、似ているその後ろ姿に、オレはなぜか胸のあたりが温かくなった。
なんか…エドと初めて会ったときと同じ感覚…。



こいつなら、信頼できる。



船長の掛け声でゆっくりと船が動きだす。


まあ、来てしまったものは仕方がない。元の世界に帰る方法が見つかるその日まで、こっちの世界も満喫してみるのもアリかもしれない。

オレは海風に吹かれる金髪を手で抑えながら、先頭に立つ麦わら帽子を見つめていた。


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