はじまり




目を開ければ、綺麗な青空。
すぐ近くで波の音。


「・・・・・・・・・・・・はれ?」


背中に感じるのは暖かい砂の感触。そう、砂の・・・・・・・・・って


「砂あああああ!?」


叫びながら起き上がると、待ってましたといわんばかりにザザーンと波が景気よく音を立てる。




ちょっと待て、どこだここは。
確かオレ、いつも通りウィンリィに起こされて下に降りようとしたら階段から落ちて───。


「なんの冗談ですかコレ・・・」


階段はもちろん家の中。
確かに外にもあったけど、周りを見る限り階段どころか家も見つからない。

頬をつねってみるけど痛い。
うん、夢じゃないみたいだ。

つーことは、ここは天国?
オレ死んだのか?
階段から落ちて。
死因は転落死だな。


「ってそうじゃないだろ!!どーすんだコレ!!」


自分につっこんで、目の前に広がる海を見る。

海なんて生で見たの初めてだ。

後ろには林。
ここ、島か何かか?


「・・・・・・・・・・・・ん?」


腰に手を当てて考えていたら、どこからか話し声が聞こえてきた。
人の声だ。


「こっちから叫び声がしたぞ」


「食い物か!?」


「こんな所に誰がいるって・・・・・・・・・お?」


「・・・・・・」


林の中から現れたのは3人の男。
オレと同じか、ちょっと上ぐらいの。

1人は麦わら帽子、1人は黒スーツ、んでもってもう1人は腹巻きに刀。

時計の秒針音が聞こえてきそうな沈黙が落ちる。


さて、どーしたものか。
ここはニッコリ笑って挨拶か?

そうだな、そうしよう。
第一印象は大事だってウィンリィが言ってた気がする。


そう思ってオレが一歩踏み出したとき、突然黒スーツから両手を握られた。


「どうも初めまして、麗しのレディ。このような場所で一体どうされたのですか?」


「ぅ、え?れ、レディ?」


オレが?

自分のことを指さしてみたら、黒スーツは体をくねらせて目をハートにさせた。

なんだコイツ。
つーかすごい眉毛だなオイ。


「お前、誰だ?」


だんだん黒スーツがウザくなってきたとき、麦わら帽子が口を開いた。


「えーっと・・・オレは・・・なんつーか、気づいたらここにいました」


にこっ。
笑ってみました。


















「・・・はぁ?」


ぅおう・・・。
んな目で睨むな腹巻き。
ホントのこと言っただけだぞ。


「てめぇ、ふざけてんのか」


「いやマジです本気です」


だから刀抜こうとしないでください。

すると今の今までオレの手を握っていた黒スーツがものすごい形相で腹巻きに向き直った。


「てんめぇクソマリモ!!レディに向かってなんて口の聞き方してやがる!!」


「うるせえ!!てめぇは黙ってろラブコック!!」


目の前でケンカ勃発。
てか腹巻き刀抜いてるし。
死人出るんじゃね?


「なぁんだ、お前迷子か」


「どーいうふうに考えたら迷子になるんですか」

しししっと笑いながら言う麦わら帽子。


いや、確かに迷子に近いけど!

でも普通は記憶喪失みたいなのを考えるだろ!


「・・・・・・ちなみにここって、リゼンブールですか?」


「りぜん?なんだそりゃ」


「・・・・・・・・・じゃあ、中央?」


「知らねーぞ?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


まじか。

麦わら帽子が嘘を言っているようには見えない。


「・・・・・・よし、最後の質問。ここは、天国?」


「何言ってんだお前」


わーお。
呆れられちゃったよ。
しかも鼻ほじってやがる。




リゼンブールでも中央でも、天国でもない。
オレの知らない場所。


ってことは、だ。
考えられることはただひとつ。




「やべー・・・・・・世界、とんだ?」




オレの言葉に、ケンカをしていた2人が止まって、麦わら帽子は首を傾げた。

そんな3人の前で、オレは乾いた笑みを浮かべた。

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