「よう名前、おめでとう」
「李典殿、ありがとうございます」
名前が結婚すると聞いたのは偶然だった
道で女官が話していたんだ、その道を通らなければ余計な事を聞かずにすんだのに
仲の良い俺と名前が結婚すると思っていた、なんて事
「いやあ、名前が結婚なんてなー」
「私も驚きました、あっという間にまとまってしまって」
色物揃いの軍師の中で、負けず劣らずな紅一点
良くないたぐいの噂ばかりが一人歩きする名前が結婚するなんて思っていなかった俺が間違ってたんだ
行動に移さなかった奴が言えることなんて無い
「なあ、納得してんのか?」
極力普通に聞く
名前に俺の気持ちが伝わらないように
「相手の家柄も申し分ないですし、ご本人もお優しいですから」
「……幸せ?」
聞き方を間違えた
もう直接聞いてやることにする
祝福するつもりはあるんだ、名前が幸せだと言うのなら
「はい、もちろん」
柔らかく笑った名前は日の光を浴びて、俺には眩しかった
それでも目を逸らすのはもったいなくて、俺も笑ってやる
「ま、不満が溜まったら手合せに付き合ってやるよ」
「あら、ではその時はお願いしましょう」
クスクスと笑う名前に、目を細める
本当に眩しい女だ
だからこそ手を出せなかったんだな、俺
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