人好きのする顔をして、他人を気に掛け、女だと言うのに武器を振るう
だからこそ、こうまで人があつまったのだろうと思っていた
このワシが、だ
違うのではないかと気付いたのは、名前の護衛で共に戦場に立ってから
ワシだからなのか、皆の前でもそうなのか、名前は楽しそうに武器を振るっていた
ぞくりとした、恐怖ではなく、興味でだ

「名前はワシと同類だろう」

揺さ振るつもりで言ったにも関わらず、名前はいつもと変わらず笑っていた
それからは、声を掛けられる事が増えた
恋仲とはまた違う、同類同士の親睦を深める宴だ

「毎日違う者と歩いておるな」
「ええ、まあ」
「本命は誰じゃ、教えてみい」
「嫌ですね、皆平等に好きですよ」

毎日、そんな会話をする
これは暗に、私が皆を好きなのではなく皆が私を好きなのだと言っているのだ
分かるのはワシと名前だけかもしれんが

「妖女は次は何を狙っておる?」

帝を招いて、この地は今や一番の都となった
それでも戦いを止めず、己で戦地に赴く名前の望みが気になった

「天下」

ぽつりと言った言葉に、流石に目を見開く
名前が言うのならば本心か、ワシがそう思った所で

「なーんちゃって」

にんまりと、名前が笑った

「冗談に決まってるじゃないですか」
「やれやれ、食えん奴だ」

ただし退屈はしないが、そんな事を考えながら杯を煽ると店内に誰かが尋ねてくる

「名前殿」
「王異殿、どうしました?」
「話があるの」
「わかりました……じゃ、お先に失礼しますね」

ワシに笑顔を向けると、振り返り王異と共に去る名前
振り返りざまの笑顔が深くて、またぞくりとする

男だけでなく女まで魅了し、それを苦でも無く受け入れる
それだけではない
名前は、全ての者から愛されるまでやめないのだろう

「とんだ妖女だ」

ただ、ワシも名前に魅入られてしまったことは、揺るがぬ事実ではあるのだが


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