自身の恋人ではあるが、名前の家に招かれるたびにこの部屋はどうにかならないのかと思う
無駄を省きたいのは私の性分なので名前には関係は無いが、それを抜いても名前の部屋は物が多過ぎる

「名前」
「はい?」
「何故同じ部屋の中にカレンダーが4つもあるのだ」
「本やDVDの付録やらゲームの特典やらで増えてしまったの」

趣味が多いのも好きな事が多いのも結構な事だ、それを否定する気はない
だが、それを全部並べる必要があるのかと言う事だ
それだけではない
着ける気が無いキーホルダーやストラップがやたらとあったり、ボールペンが使いきれない程並んでいたりするのだ
それに目を向けていると、ふふふと名前が笑う

「于禁さんは理解できないと思うけど、性分なのよ」
「名前のか」
「ええ、好きな物、気に入った物は近くに置きたい……というよりは、不安になるのかもしれないね」
「何がだ」
「ふと寂しくなるの、それで衝動買いする事もあるかな」

そういえば一人暮らしを始めてから増えた気がする
そんな事を呟きながらカレンダーを手に取る名前は寂しげだ
そんな素振りを滅多に見せない名前が口に出したことに驚いたが、それとこれとは話が別だ
そもそも解決法を自分で理解しているならば、そのような表情を浮かべる必要はないのだから

「名前、共に住むぞ」
「……え?」
「1人が嫌だと言うのなら誰かと共に居ればいい、違うか?」
「違わないけれど、于禁さんに言われるとは思っていなかったの」
「どういう意味だ」

眉間に皺を寄せると、名前がまた笑う

「自分の陣地を侵されるのが嫌な人だと思っていたのよ」

それは確かに間違っていない、私は自らのテリトリーを守りたいと思っている
だが、それでも

「そう思うならば、とっくに名前と別れているだろうな」
「……それもそうね」

素直に伝えられないのも、私の性分だ
それでも、うふふと笑う名前が嬉しそうであった事に安堵する

「それで、返事は」

私が口にすると、名前は此方へと近付いてきた
私の前まで来て立ち止まると、深く頭を下げる

「よろしくお願いします」

そうして頭を上げた名前の頬は微かに赤らんでいて
私は口角が上がるのを感じた


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