次の日は休日、家でだらだら過ごして軽く昼食を食べてからワインを取り出す

「おっ、待ってました!」
「大袈裟ですね」

笑いながら封を切ろうとしたところで、チャイムが鳴った
ワインを置いて賈クさんに断って玄関に向かう
ドアスコープを覗いてため息が出た
それで向こうに感付かれてしまったのだから、つまらないミスをしたと思う

「名前、いるんだな」
「……何の用で来たの?」

思いの外、不機嫌な声が出た
外に居たのは健二、元彼だ

「分かってるだろ」
「何が」
「昨日男と居ただろうが!」
「近所迷惑だから騒ぐな」

健二は時々こうして彼氏面して訪ねてくる
別れたのはコイツの浮気が原因で、出ていったのもコイツの逆ギレ故
私が責められるいわれは何一つ無い

「大体男が着てたの俺の服だろ!」
「アンタが置いていったからでしょうが、私がどう使おうと勝手じゃない」

毎回玄関先で喚いては、警察呼ぶぞの一言で帰っていく
訳が分からない男だ
コイツと付き合った事だけが私の汚点である
おかげで相当心は広くなった気はするけど

「また女の子に振られたの、それともお金が無くなった?」
「だから!」
「まあ何が理由だとしても、アンタと関わる気は私には無いのよ」

はっきり言ってやると、何事かを外でギャーギャー喚きだした
面倒だなあと思った辺りで、室内から足音

「名前、遅いが何か……あったようだねえ」
「すいません、楽しみを先のばししちゃって」
「昨日の男中にいんのか!」

一緒に買い物をするくらいの仲ならそりゃいるだろ、っていうのは火に油だろうから言わないけど
賈クさんは健二の言葉を聞きながら顎を何度か撫でたあと、なるほどねと呟いてニヤリと笑った
多分、何か企んでる顔

「名前、俺に任せてみる気はないかい?」
「え、でもコイツ相当面倒臭いですよ」
「まあまあ、この手合いはやり込めないと何度も来るだろうしね」

もう既に何度も来ている、と言いづらくなった
少し考えて、彼が軍師だと思い出す
私がちゃんと賈クさんの目を見ると、さっきのニヤリより幾分か柔らかい笑い方になる
2日一緒にいて、初めて見る顔だった

「大丈夫、悪いようにはしないさ」

そんな顔をされたら断れないじゃないか

「……じゃあ、お願いします」

軽く頭を下げると満足そうに頷いて、賈クさんは玄関に近付いた


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