飲み終わるのを待って、私は口を開く

「それで、今後の事なんですけど」
「……ああ、それなんだよなあ」

困ったように頭をかいた賈クさん、私がこんな事を言うかなんて想像もしていないだろう

「賈クさんさえ嫌でなければ、帰れるまで家にいませんか?」
「んー…………え?」

やっぱり賈クさんは驚いている
そりゃあ私だって急に知らない男の人と暮らすっていうのは正直無いけど
一方的にとはいえ、彼を知っているし、この世界で頼る物が無いだろうことも分かってしまっている
そんな人を、どうして追い出せるだろう

「……本気かい?」
「流石に嘘でこんな事は言いませんよ、それにあなたにはこの世界で頼れるものが無いじゃないですか」
「まあ、そうなんだがね」

ううんと唸って、賈クさんは黙り込んでしまう
正直、こんなに渋るとは思っていなかった
仕方なしとすぐ諦めて了承すると思ってたんだけど

「何か不具合でもありますか?」
「ああ、あんたにね」
「私?」
「この世界の事はわからんが、大の男1人を養うってのは相当な苦労があるだろう」

かなり驚いた
無双の賈クは、使えるものはなんでも使うと思っていたから……割と酷い事を言ってるな

「まあ、大丈夫だから任せてとは言い切れませんけど……1人くらい増えたってなんとかなりますよ」

前にろくでなしがいたから実証済みだ、とは口に出さないけど
未だ唸り続ける賈クさんは、やっぱり納得できない風ではあった
しかし、そうせざるをえないと分かっていたんだろう
諦めたようにため息をついて、私に頭を下げた

「すまない名前殿、世話になる」
「任されましょう、あと呼び捨てで結構ですよ」

そうして頭を上げた賈クさんは困ったように笑う

「それと、この世界の常識を知りたいね……名前に迷惑はかけられない」
「気にしなくていい、とは言い切れませんね」

じゃあ、と続けようとした言葉は、ぐうという間の抜けた音に遮られる
お腹の音だ、私の
目の前の賈クさんが頭を下げて揺れている……分かりやすく言うと、笑っている
顔が熱くなってきた、恥ずかしいけど晩ご飯まだなんだから仕方ないじゃないか

「……とりあえずご飯にしましょう、作りますから待ってて下さい」
「あははあ、名前は料理も出来るのか、楽しみだねえ」

なんとなく、今ので賈クさんの緊張も解けた気がする
そう考えると、お腹がなったのも良かったのかもしれない……なんて割り切れたりしないけど


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