目が覚めると、一番に知らない天井が目に入った
自分の部屋でも、名前の部屋でもない
体を起こして周囲を見渡すと、そこは幕舎のようだった

「失礼……郭嘉殿、目覚めたようだね」
「賈ク、か」
「おや、俺では残念だったと見える」

賈クへ一度目をやって、再び天井を見る
私は何をしていたんだったか
数日とはいえ、1日1日が初めての連続だった
だからか此方で何をしていたのかを、いまいち思い出せない

「郭嘉殿、まだぼんやりするようなら寝ていた方がいい」
「いや……」
「そんな状態じゃ戦場には出られないと思うが?」

そうだ、私は戦に出ていた
敵の攻撃を受けて、それ自体は大した傷ではなかったはずなのに倒れてしまった
名前には、不摂生だと言われた気がする
ちゃんと休め、深酒をするな、夜更かしするな
まるで母親のようだ、思い出して笑ってしまう

「……郭嘉殿」
「いや、大丈夫だよ、ちょっと面白い夢を見ていたんだ」
「夢?」

そう、夢だった
名前に世話になったのも、此処とは違う世界に滞在したのも
名前を好ましく思ったのも

「さて、行こうか賈ク」
「……まあ、顔色は倒れるよりいいか」
「おや、心配してくれたのかな?」
「曹操殿がね」
「それは申し訳ない事をしたね」

俺なら申し訳なくないのかと、賈クが肩を竦める
そうして、ふと思い出した
賈クの様子がおかしかったあの日の事
彼はおかしな夢を見たと言っていた、それがもし私と同じ世界の事だったら?

「ねえ、賈ク」
「なんだい、郭嘉殿」

分かち合えるのではないだろうか、この切なさを、やるせない思いを

「…………いや、なんでもないよ」

言おうか悩んで、止めた
本当におかしな夢を見ていただけなら、私が言う事は突拍子もない事だ

「なんだなんだ、まだぼんやりしているのか?」
「ふふ、そうかもしれないね」

それに、言うのが惜しかった
名前について誰かに話したいという気持ちはあったけれど、それ以上に自分の心の中に隠しておきたいという気持ちもあったから

「さて、長らく休んでいた分しっかりと働かなくてはね」
「郭嘉殿が寝ていたのは半日程だがね」
「おや、そんなものだったかい?」

いよいよ夢じみて来た名前の存在
確かめようもないし、仕方ないけれど
それでも覚えていたいと思う
お人好しで愛らしい、彼女の事を


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