「え、っと、とりあえず勘違いなさってます」

首に手があるけれど、力を入れられていないから、ちゃんと喋れる
尋問する姿勢なんだろうなあ、とぼんやり思った
いくらなんでも危機感が無さ過ぎるとも

「どういう事だい」
「ここは私の部屋です、周りを見てください」

そう言われてから周囲を確認したらしい
賈クと思われる人は、目を見開いて私の拘束をといた
というより、驚き過ぎて離してしまった、という感じだった

「なん、だ……?」
「私の部屋です、貴方に侵入した覚えは?」
「…………無いねえ、自分の部屋で執務中だったはずだが」

そこまで言って、彼は顎に手を当てて考え込む仕草を見せた
考えさせておいても良かったんだけれど、私にも聞きたいことがある

「あの、良いですか?」
「……なんだい?」
「お名前を教えて頂いてもいいですか……あ、私は名前です」
「賈文和、賈クとでも呼んでくれればいい」

うわあ確定
タイムトラベラーとか、なんで私のところに

「賈クさん、とりあえず私の分かる事だけ説明します」

そうして、私は説明をする
彼が何千年も前の違う土地から来ただろうこと
ここが日本、倭国だということ
彼が知る人ぞ知る、ある程度の有名人だということ
流石にゲームのキャラクターだということは伏せておいた

「あんたは、俺を知る人って訳かい」
「理解が早くて助かります」

頭の回転が早い人で良かった気がする
これが魏延だったらと考えてちょっと寒気がした

「信じられない、と言いたい所だが……信じない訳にゃいかないねえ」
「私も正直信じられませんから……心中お察しします」

私の言葉に困った様な顔をして、賈クさんはまた考え込んでしまう
そりゃあ色々考えるだろうなあと、私は帰ってきてそのままだったので荷物を定位置に置く事にした
着替えはお風呂の後がいいから、とりあえずは保留で
キッチンからグラスを2つとペットボトルの烏龍茶を持ってきて、テーブルに置く
注いでから、私の向かいに置いた

「とりあえず飲み物いかがですか、簡単なものですが」

私の言葉で意識が戻って来たらしい賈クさんは、ゆっくりとした動作で私とグラスを見た
少しだけ悩む素振りを見せながらも、とりあえずは従ってくれる様だ

「これは?」
「お茶です、冷たいですよ」

テーブルを挟んで私の前に座った賈クさんは、まじまじとコップを見ていた
もしかして、中身じゃなくてグラスについて聞いたんだろうか

「この湯飲みは、玻璃かい?」
「そうですね、この時代では一般に普及していますし格安で手に入ります」

百均、と言っても分からないだろうからそこは伏せておいた
見ず知らずの相手が出したのを口にするのも躊躇うかなあと、とりあえず私が先に一杯飲む
その様子を見ていた賈クさんは、ニヤリと笑う

「気を遣わせたかな」
「え?」
「自分が先に飲めば俺が飲みやすい、そう考えたんじゃないかと思ってね」

参った、すっかりばれてる
あははと笑って流してるのと同時に、賈クさんは烏龍茶を一気に流し込んでいた


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