そわそわしている陸遜さんの為、早めに夕飯を終えた
部屋から水を張ったバケツと花火を持って外に出る、駐車場の隅を借りる事にしよう
マッチとライターは、陸遜さんが大事そうに持っていた
思わず笑ってしまったけど彼は気付いていない、よっぽど集中しているようだ
花火の袋からろうそくを出して、陸遜さんに手を差し出す

「じゃあ、ライターを貸してもらえますか?」
「はい!」

力強い返事と共にライターを手に置かれて、また吹き出しそうになる
小さい子どもの様で可愛いなあと思いながら、ろうそくに火を点けて地面に立てる
ポケットにライターを入れて、陸遜さんに花火を渡してあげた
すぐに私も手にとって火を点ける
ぱちぱちと火花が出始めると、陸遜さんは目を見開いて驚いたようだったけど、直ぐにその顔は嬉しそうなものに変わる

「す、すごいです名前殿!」
「ほらほら、陸遜さんもやってください」

私が促すと、陸遜さんもおそるおそる花火に火を点ける
火花が出ると一瞬びくっとしたけれど、すぐに笑顔に戻る
今まで困ったような顔ばかりだった彼の子どものような顔は、私にとっては凄く嬉しいものだった
ぱっと顔を上げて私を見た陸遜さんは、唐突に顔を赤くして俯いてしまう
なんだろうかと首を傾げて、再び花火に手を伸ばす

「そうだ陸遜さん、マッチ差し上げますよ」
「えっ、いいんですか!?」
「まあ、こちらにいる時に好き勝手に点けられるのは困りますけど」
「大丈夫です、勝手に点けません!」

やっぱりおもちゃを貰った子どもの様だ
笑いながらマッチを差し出すと、陸遜さんは終わった花火をバケツに入れた後で両手でしっかり受け取った

向こうに持っていけるかは分からないけれど、記念にはなるんじゃないだろうか

何度か消えてしまったろうそくにマッチで火を点けたりという事はあったけれど、あっという間に花火は終わった
部屋に戻って直ぐに2人ともお風呂に入って、あとは寝室に行くだけ

「陸遜さん、そろそろ寝ましょうか」
「はい……名前殿、今日は楽しかったです」

おやすみなさいと返されると思っていたら、急に座った陸遜さんがそう言った
思わず笑顔になる、凄く嬉しい

「よかった」
「え?」
「陸遜さんの楽しそうな顔が、やっと見れましたからね」
「あ、そ、それは、ですね」

ほんのり赤くなる陸遜さんに頭を下げる
私には、言っておかなきゃならない事があるから

「ありがとうございました、私も楽しかったです」
「……名前殿?」

私の変化に気付いたのか、陸遜さんの声音が変わる
何かを問われる前に、立ち上がって寝室に向かう

「おやすみなさい、陸遜さん」
「え、あ……お、おやすみなさい、名前殿」

寝室に入って、聞こえないようにため息をつく
明日も休みなのだけれど、陸遜さんにはそれを伝えていない
布団に入って雛子から返してもらった無双を起動させると、賈クさんの時と同じようにキャラクター選択画面には変わらず陸遜さんがいた
適当にステージを選んで、フリーズする事なくクリア
私の推測が正しいなら、これで陸遜さんは帰れるはずだ

明日からは1人暮らしに戻るはず
それが良いのか悪いのかは、私にはまだ分からなかった


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