第24話 あの頃とは違う

「希望通りの物はできたけど、あまりズームアウトを繰り返すと酔うことはするから、そこは特訓してね」
「はい、ありがとうございます」
「私が案を出したんです!目線の動きや水晶体の動きで見たい所を把握して、ズームしたりします」

 なんかめちゃくちゃハイテクな機械なんじゃないか、このゴーグル?本当に貰って良いのか?と不安になりながら装着してみる。部屋の中で付けたら普通の物だ。

「通常は目の保護を考えました。目の前で急に爆発しても眩しくないですよ」
「なるほど、で、遠くを見ようとすると…?」

 窓の外を見てみる。すると遥か遠くの雲がズームされた。

「す、すげー!!」
「そこを見るのをやめようとしたら戻るはずです」
「あ、ほんとだ普通の視界になった」

 それにしてもこれは、めちゃくちゃ目の奥がぐわんとする。そこは想定済みだったし、それに慣れるようにしなければならない。装着の問題ではなく私の目を慣れさせる問題だ。

「ありがとうございます。慣れるようにします」
「うんうん、その為にこんな物も作ったよ」

 そう言って先生が取り出したのは眼鏡だ。一見普通の眼鏡である。

「これも同じ要領でズームアウトするように作った。コスチュームは訓練以外では使えないからね。これをつけて日常生活を送ったら慣れやすいと思う」
「あ、ありがとうございます!」

 そんな物まで作ってもらえるとは、実に手厚い保証だ。どうしても気持ち悪くなれば外せば良いが、日常的に使用できるようにするのが理想だ。有り難くそれも頂戴し、開発工房を後にした。


「眼鏡またかけるようになったんだな」

 あれから何回か爆豪に呼ばれ、夜部屋に来るようになっていた。なぜ呼び出されているのかはよく分からないが、ただ私の部屋に来いと言っても来てはくれなかった。そして今日も爆豪の部屋に来ている。

「これめちゃくちゃハイテクなんだぜ」
「へえ」
「勝手にズームアウトしてくれんの。やばいよな」
「ちゃんと考えてやってんだな」
「当たり前だろ」

 眼鏡をかけるようになってから2日経った。大分慣れてきている。慣れたら慣れた分だけ、この装置の便利さを実感する。

「明日」

 爆豪の口からその単語が出る。明日、それは仮免試験の日だ。

「ちゃんと受かれよ」
「爆豪もな」

 私たちの解散はいつも早い。大体夜ご飯を7時に食べて8時に集まり(爆豪の部屋に行き)、9時には部屋に帰る。今日は明日に備えてたったの30分で部屋を出た。
 私はようやく個性にも慣れ、ある程度扱えるようになった。課題として出された必殺技は作ることができた。名称は決めていないが、敵を拘束する技をきちんと使えるものにした。あと、そこら辺の物を細かく砕いて敵に目一杯ぶつけるのも技になってきた。とりあえず名前は「拘束」「メテオ」にしようかな。…センスが欲しい。
 ゴーグルさえあれば、どの技も広範囲に出来る。明日が楽しみでありつつ不安にも感じながら眠りについた。

 バスで連れて来られたのは国立多古場競技場。ヒーロー仮免許取得試験会場である。それから熱苦しい人が頭から血を流したり爽やかな人の手を爆豪が撥ねたりしたがユニフォームに着替えた後、無事に一次試験のガイダンスが始まった。
 ボール6個を与えられ、装置を3個体に付けなければならないらしい。そして3つの装置全てにボールが当たったら脱落。3つ目の装置に当てた人がその人を倒したこととなり、二人倒した時点で勝ち抜けになるそうだ。
 ……これ、めちゃくちゃ有利じゃないか?つまり、この6個のボールを二人にぶつけたら良いんでしょ?ならめちゃくちゃどうとでもできるな…。
 すると壁が開いた。壁が開いた、というのは展開したということである。ただっ広いスタジアムに様々な地形が作られていた。

 緑谷くんが全員で固まって行動することを提案するが、爆豪や轟くんなんかが離れて行った。私もなるべく目立たない方が良い。人から見られない所でゴーグルを使ってボールを当てまくる作戦だ。私もそっとその場を離れ、人がいなさそうでかつごちゃごちゃしている工場を目指す。アナウンスでカウントか始まり、とうとうスタートした時に。

「え、何これ!?」

 囲まれた。見知らぬ人たちに囲まれた。何で?何なんだこれは?理解ができないが、ひとまず飛んでくるボールは全て跳ね返した。

「来てんじゃねえよッ…!」

 自分の足が着いている地面を動かし、高い塔を作る。これはただの壁の応用だ。

「雄英は真っ先に潰すもんだからな!」

 見知らぬ人に言われる。何だそれ姑息すぎるだろ!良いのかヒーロー志望の皆さん!

「ってか何で私雄英ってバレてんの!?」
「そりゃ体育祭の時よく分からん動きばっかしてた奴は良いカモだからな!単独行動してくれてありがとう!」
「うるせー感謝してんじゃねえ!!」

 体育祭のあれで舐められているようだ。ふふふ、だが君たちは相手を間違えたようだな。私はあの頃とは違う、きちんと個性を把握した私なのだ!
 空中にバネを作り、それに飛び乗ると同時に塔を倒して大きな砂埃を上げる。予想通り全員の姿が見えなくなったのを確認して適当な工場の上に移動した。その中でも勿論着いてくる人はいるわけで、こういうのを繰り返して古い落としていくのが目的だ。

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