これは懐かしい感覚。
でもはっきりは分からない。

 遠い遠い昔に感じたことのあるような、白い感覚。
 いくら頭を働かせようとしても、柔らかい布が被せられたように思考が遮られて何も思い付かない。

 体は深い泥に捕らわれたかのように動くことができず、けれど、けっして沈むことはない方舟に乗せられているかのよう。ただただ、安心感に包まれていた。

 いつだっただろうか。

 これは、いつから感じることがなくなったんだろうか。

 必死に記憶を辿ろうとしても、まったく思い出せない。
何故か涙が溢れるばかりだ。
 なんで涙が溢れるのだろうか。

 悲しいのに、優しい。
 怖いのに、嬉しい。
 楽しいのに、つまらない。


 憎いのに、愛しい。


 嫌だ、もうやめてくれ。
もう僕にかまわないで。
ひとりで大丈夫だから。平気だから。もう泣かないよ、安心して。


 だからこの手をどいてよ。

 こんな暖かいものは知らない。


 ねぇ、あなたはだれ…?













(―――ねぇ母さん)









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ツイッター診断
「 まだ半分夢の中にいる状態で額にキスされているヒューバートを妄想してみよう。」
より

この説明が無いと何がなんだか分からないですね…

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「見えない臓器の名前は」
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