※がっつりオレブンネタで、貴志幸、アス黄、天フラ、立春、フェイ天っぽい要素があります。薄いですがご注意ください。


○月一日

 今日、天馬と、フェイという男の子に招かれて彼等のサッカーチームに入ることになった。理由はよく、分からない。けれど好意的な視線と…あの、綺麗な花は嬉しかったから。それに、私も彼等の役に立てたら良いなと思うのだ。戦いを無くし、平和な未来を守る為には、私自身が違う戦いの形をもっと知ることも必要だろう。けど、キャプテンのフェイとはまだ馴染めない。他の子とも、挨拶程度の言葉しか交わしていない。…これから、上手くやっていけるだろうか?

○月二日

試合で初めてシュートを決めた。褒められた。少し恥ずかしい。
フェイとはちょっとだけ話せたけれど、まだまだぎこちない。今日は黄名子という女の子に話し掛けられた。小さいのに、どこか母性を感じるような温かい女の子だった。きっと図鑑で見た、菜の花やひまわりといった黄色い花がよく似合うだろう。それらの花が咲いた場所にキャラバンを使って行ってみたいと言ったら、あの水色の変なクマに怒られるかしら。それにしてもよく彼女を見守っている男の人…アスレイと言ったか、あの人とはどんな関係なんだろう。気になる。

○月三日

オールデリートという技を覚えた。もう、サッカーグラウンド以外において私が何かを消すことはないだろうと、ふと、思った。
今日は沢山の人の名前を覚えた。キシベ、ナグモ、ユウチ、サスケー、フユカ、シンク、メカエンドウ、ユキエ、カリヤ、タチムカイ…漢字はまだ分からない。
水色のクマはワンダバというそうだ。水色の変なクマは?と天馬に尋ねていたところを見られ、怒られた。
練習が終わった後、ユキエが花の栞をくれた。…大切に、したい。





○月十日

私が加入するまでフェイが一番得点を決めていたようだが、今日私がそれを抜いてしまった。なんだかますますフェイと話せない。きっと彼は気にしていないだろうけれど、どうしたら良いかよく分からないのだ。自分の人付き合いの経験の無さが痛い。
フェイと話をしたくて彼のことを見ていたが、彼は黄名子や天馬と仲が良いようだった。…彼等を通して仲良くなれるだろうか。
貴志部は南雲とユウチによく構われている。好かれているのだろう。彼はとても優しいから。この前、相手と競り合ったときも彼は私に加勢してくれた。報われて欲しいなと密かに思う。
メカ円堂についてはよく分からない。ぶつかっても固くなかったのは意外だった。

○月十一日

フェイが、輝くこんぺいとうを沢山くれた。余りものらしいが、嬉しい。最近は少しずつ喋れるようになれた。
ただ、そのあとみんな太古の天然水を飲み過ぎてお腹を壊した。むろん、私も。今日はもう筆を置いて寝ようと思う。

○月十二日

そういえば、狩屋と冬花も割と仲が良いように見える。大半は冬花に弄られる狩屋…といった構図であるけれど。冬花の笑い声はとても綺麗。藤の花が頭をよぎる。
ワンダバがTMキャラバンで三国志時代の花畑に連れて行ってくれた。黄名子と一緒に走り回って、楽しかった。私は上手く笑えていただろうか。立向居と貴志部が同時に転んでいたのを何故か鮮明に覚えている。怪我をしていないと良いのだけれど。立向居も貴志部もこのチームの大事なメンバーだから、抜けてもらっては困るし、何より心配だ。
たまにはサッカーをせずにみんなと遊ぶのも良いと思った。また、来たい。

○月十三日

京都の対戦ルートに挑もうと歩いていた道中、アスレイと黄名子と逸れた。焦って探し回ったすえ、見つけた二人は呑気におだんごを食べていた。まったく、しかたない。フェイは呆れていたけど、お土産を買ってくれたので良しとするらしい。甘い。
幸恵と冬花と黄名子と、「女子会」というものを開いた。皆で少しだけ夜更かしをして話をした。新鮮だった。みんな、恋愛に興味があるようだ。黄名子はフェイと仲が良いからてっきり彼のことが好きだと思い込んでいたのだけれど、違うらしい。…まさかアスレイだろうか。いや、でも……。恋の形に年齢は関係ないのかしら…。
幸恵は貴志部が気になるそう。彼が聞いたら喜ぶに違いない。冬花には、笑ってごまかされた。ずるい。けど、無理に聞き出すのも悪いと思って言及はしない。話は、私に回ってきた。私はよく分からないと答えた。かなり長い時間、問い詰められた。
恋愛は、本当によく…分からない。今まで私の人生に入る隙のないものだったから。けれど、一瞬よぎった彼の顔のことは、皆には内緒。…この日記が誰かに見られたらどうしよう。名前は、ぼかしておこう。

○月十四日

ディフェンダーのシンクは、ワンダバよりも背が小さい。実は、彼とはまだ話したことがない。
試合中に怪我をしたら、冬花が手当をしてくれた。将来看護師になりたいのだそうだ。とても素敵なことだと思う。怪我を負った人、病気の人。傷ついたみんなを癒したいと願う冬花も、もしかしたら誰かに救われたのだろうか。
恐竜時代に向かった時の恰好のままキャラバンの中で居眠りをしていた天馬に、フェイが自分のジャージをかけてあげていたのを見た。あの二人は、とても仲が良い。フェイが天馬を見る目が特別だということくらい、私にも分かる。

○月十五日

ユウチと南雲は基本的に仲が悪い。いつも自分たちがベンチであることに文句を言っている。二人とも自我が強い。けれど中々の努力家で、実力も相当。私にも見習わねばならないことが沢山ある。
普段は仲が悪い二人だが、貴志部を弄るときだけは妙に協力的で不思議だ。そのせいで貴志部は今日も幸恵を誘えなかった。…可哀相に。
二人が別の興味の対象を見つけて走っていった後、彼の頭をこっそり撫でてあげた。すると少し笑顔になってくれた。良かった。彼が報われる日は来るのだろうか。
そういえば、昼寝をした時に家族の夢を見た。お父さんとお母さんが笑って、私のことを抱きしめてくれている夢。とても、懐かしい。

○月十六日

私の化身、カオスが最終進化を遂げた。悲しい過去を背負わせてしまったけれど、長い付き合いだ。痛みも強さに変えていけるような、天馬みたいな人になりたい。零式の文字の金色は、誇って良いだろう。
そういえば、サスケーの犬の被り物が取れたところを見たことがない。あの中には何か秘密があるのだろうか。気になってしかたがない。笑顔で化身デスロスを纏い、必殺技を連発する彼はとてもミステリアスだ。
今日はフェイとあまり話せなかった。仮にもキャプテンと副キャプテン、チームを背負う者なのだから、本当はもっと絆を深めなければいけない筈なのだけれど。人付き合いは、難しい。
一人で抱え込み過ぎるのはよくないと思って幸恵に相談してみた。すると、気にすることはないのだと微笑まれた。彼女も以前人付き合いで悩んだことがあるらしい。大切な幼なじみが喧嘩をしてしまったけれど、上手く繋いでやることが出来なかった。けど、今はその二人も前と同じように笑えている。時が来れば自然ときっかけがやって来るから大丈夫だよ、と彼女は言った。きっかけ、か。

○月十七日

天馬がフランスで飲むコーヒーが美味しくないと舌を出していた。私は好きなのだけれど、彼にはまだ苦いのかな。砂糖を入れてあげたら喜ばれた。…うれしい。

シンクは私以上の無口だと思っていたけど、それはただの人見知りだったらしい。今日ユウチに抱きかかえられているときは凄まじい大声で騒いでいた。嫌がっているようだから助けてやると、小さな声でぶっきらぼうに感謝された。意外な一面を知った。

追記:貴志部、初めて幸恵を誘うことに成功。良かった。
ユウチと南雲も、面白がっているだけで別に彼のことが嫌いではないのだ。やはり、優しい彼は誰からも好かれている。

○月十八日

アスレイはこのチーム唯一の大人だ。よって、よく皆のサポートに回ってくれる。私もお世話になることが多い。ミッドフィルダーとして活躍する彼の指示は、非常に的確でわかりやすい。ただ、私がアスレイと親しくなってからたびたび黄名子の不思議な視線を感じるようになった。そんなときの彼女はいつもお餅のように赤くなった頬を膨らませている。どうしたんだろう?
話は変わるが、チームで一番努力家なのは立向居かもしれない。違うチームにいるある人に怒られてしまうから努力は怠れないのだそうだ。きっとそれだけではないのだろうけど、その相手とは誰だろう。尋ねたら、頬を赤くして私だけに名前を教えてくれた。「オトナシハルナ」…覚えておこうと思う。今度そのチームに、助っ人として向かうかもしれないから。

○月十九日

狩屋は試合中、たまにやたら女子らしい外見になる。それでずる賢い技を連発するものだからギャップが凄い。どうやら、キリノセンパイ?という方のオーラを貰っているらしいけれど…キリノセンパイとはどんな人だっただろうか。かつて戦った時の相手は、もうよく覚えていないから、今度天馬に教えてもらおうと思う。
幸恵と冬花は仲が良い。二人が一緒に走っていると、そこに花が咲いたように場が明るくなる。それから、二人とも、いつも良いにおいがしている。不思議だ。

○月二十日

今日、ようやくチームのユニフォームが正式に決定した。はかまウェアというユニフォームだ。見た目は動き辛そうに見えるが着てみるとそうでもない。みんなよく、似合っている。セーラーウェアというユニフォームを皆で着た時は…アスレイが少し可哀相だったから。あれはもう、忘れてあげよう。
ちなみにエンブレムはフォークが交差しているのが特徴的な赤っぽいマーク。最初は締まらない印象を受けたが、今は中々気に入っている。
新ユニフォームでの初の試合、体力が尽きた私と交代して入った南雲の追い上げは凄かった。いざという時の彼の頼もしさは素晴らしいものだ。化身、キングバーンをアームドしたファイアトルネードDDの威力が敵を圧倒する。…しかし、ミキシマックス時の彼の姿は誰かを連想させるような気がする。ガゼルという人とミキシマックスをしているそうだが、一体誰だっただろうか…。中々思い出せない。

○月二十一日

アスタとサンの夢を見た。彼等も実は、今別のチームで活躍している。会いたい。次会う時には、彼等の為に幸恵に選んで貰った栞をプレゼントしようと思う。喜んで、くれるかな。
天馬の化身が変わった。纏うペガサスが赤くなったのだ。少し、懐かしい。あの試合のことを思い出すから。
このチームでサッカーをするのは楽しい。随分馴染めたと思う。メカ円堂に、「サッカーやろうぜ」と言われた時、笑顔で返せた。私は、変われているだろうか。前に、進めているのだろうか。

フェイが、黄名子と話し終えたあとに、一瞬切なげな表情を浮かべたことだけが気掛かりだ。そういえば、このチームに入って一番最初に抱いた不安をまだ解消し切れていない。





○月三十日

今日の試合後、フェイと初めて二人きりになった。
お互いに溜まり溜まっていたものがあったから、ぽつりぽつりと、色々なことを話した。チームのこと、目標のこと、それから、過去こと。その結果、彼が抱えている様々な苦しみや悲しみが、少し私と似ていることが分かった。
天馬に出会って救われたことも、同じだった。
フェイに親近感が沸いたと言ったら、彼は微笑んで「フランの生い立ちを知ったとき、僕も同じようなことを思ったよ」と言った。フェイにも私にも、愛に飢え憎しみに囚われていた時期があったのだ。周りには何もなく、ただ、一人ぼっちで泣いていた。けれど、フェイはそれらからもう解放されたようだ。世界で一番大事な人が出来たのだと。それから、見守られていたことを知ったのだと言っていた。穏やかな顔で、私たちを呼びに来たアスレイに駆け寄っていた。私はそこで初めて、アスレイとフェイが似ていることに気が付き、悟った。…きっと、色々なことがあったんだろう。
フェイとは、随分近付けた気がする。彼がキャプテンのチームで、これからも頑張って行きたい。




(続く)

2013.04.05
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