仲良きことは美しきかな



 彼女の姿を目で追うようになったのはいつからだろう。気づけば彼女の事ばかり気になっていて、この気持ちが何なのか分からずにいる。自分で言うのも何だが、大堂昂太は友人は多い方だ。ただ、彼女――百香を前にすると上手く行かない。そう、今だって無意識に彼女の姿を目で追っていた。休憩時間になり、クラスでもムードメーカー的な彼女は友人と嬉しそうに話している。元気で明るくて笑顔が眩しい。
 実の所、昂太はよくいじられる。主に涼や雅斗だが、百香もその一人だった。ただ、彼女と二人は違う。どこがどう違うのか、自分でもよく分からない。この何とも言えない感情の正体が分からなくて、頬杖をつき、さり気なく彼女を見つめていると、

「昂太? どうしたの〜?」

「べ、別に何でもねえよ」

 どうやら百香は昂太の視線に気づいたらしい。友人からはなれ、こちらに歩いて来る百香に動揺を隠せない。まさか気づかれるとは思わなかった。それとも自分では気づかぬ内にじっと見つめていたのだろうか。

「うそー、こっち見てたよ」

「見てねーし、き、気のせいだろ」

 唇を尖らせる百香を正面から見る事が出来なかった。否定しながら泣きそうになるとは我ながら情けないが、涙脆いのだから仕方が無い。こんな事ではまた涼と雅斗に弄られる。そう思った瞬間、嫌な予感がして振り向くと、その二人が意味ありげな視線をこちらに向けているではないか。ドSであるあの二人にいいネタを自分から提供したようなもの。
 消え入りそうな声で反論するが、誤魔化す事は出来なかったらしい。逆にじっと見つめられ、いたたまれなくなる。

「な、なんだよ」

「そんな反応が面白からよく弄られるんだよ〜」

「面白くねーし」

 くすくすと笑う百香に背後からの視線が痛い。穴があったら入りたかった。今直ぐにでも。勿論、ドSな二人が許してくれるとは思えないが。生暖かい視線が一番困る。それならいっそこの場で弄ってくれた方が楽なのに。流石はドSだ。

「え〜、面白いよ!」

「お、面白くない!」

 今はまだ、百香への気持ちに気付かない事にしておこう。きっと、もう少しすればこの想いの正体が分かるはずだ。ちなみにこの後、涼と雅斗にしっかり弄られた昂太である。



 了






 


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