千歳と初めて会ったあの日から結構な月日がたった、つまり付き合い始めてから三ヶ月ほどたったわけなのだけれど、周りはすっかりお祭り気分だった それもそのはず、あと数週間もすれば木下藤吉郎祭と呼ばれる所謂文化祭があるのだ、各部活やクラスで出し物をするのが恒例なのだが私はなぜだか今年もミスコンにエントリーされていて、クラスメイトの厚意によりクラス出店の手伝いを免除された、まったくもっていい迷惑である 去年一昨年共に友人にエントリーされ続けたため、今年は彼氏も出来たしそういうことは控えようと友人に話せばすでにエントリーを済ませたのこと、まじおだつなや クラス内でも何もすることが無い私は何となくテニス部のお手伝いをすることにした、ただ単に千歳と一緒にいたいだけだったりもするけど 「名前!」 「はいはい、ねえ白石、今年の男テニは何するの?」 「まあ今年も女装喫茶やなきっと」 少し気が引けていた男子テニス部の門をくぐる行為も今ではすっかり慣れたもんだ どうやら私と千歳が付き合っているという事実が学校中に広まっていたらしく生暖かい目で見られることが多くなった、解せぬ そのためこうしてテニス部に出入りしていてもファンたちからは何のお咎めもなし、私としては嬉しいような悲しいような そんなことはともかく、背後から抱きついてきた千歳に相槌を打つ、どうやらテニス部は今年も女装喫茶をやるみたいだ 去年はミスコンやらなんやらで色々と忙しくってあまり出し物を見て回れなかったから今年は中学最後の思い出として千歳と色々と回りたいなあ 「千歳は去年どんな格好したの?」 「うぐっ……そげんこと聞かんでよか」 「そう言われると余計気になるっしょや」 「名前、千歳はな、去年……」 「白石だめばい!」 「千歳黙って」 にやにやと厭らしい笑みを浮かべる白石に対して千歳がやかましいので咎めればしゅんと落ち込んだ あらやだめんこい、ではなく今は白石の話に耳を傾ける、去年出し物部門で優勝したテニス部で千歳は何をやったのか、すごく気になる 「千歳は去年魔女宅のキキの格好やってん」 「キキ……!」 想像したら似合わなくって思わず笑いそうになる、しかし笑いを堪えることにより肩がゆれてしまったらしく千歳が不貞腐れたように私の肩にアゴを乗せた 「そうなるんば見えちょったけん、嫌だったとよ」 「ふふ、ごめんごめん、今年は何の格好するの?」 「知らん、いつも白石が勝手に決めよる」 「せやな、今年はマダム・ジーナなんでどや?」 「……ジブリ尽くしね」 マダム・ジーナな千歳を想像してまたも笑いがこみ上げてくる、やばいツボに入ったかも またそげん笑いよる、絡み付いている腕の力が強くなってそれに笑みがこぼれる そういや友人がミスコンの衣装何がいいか考えとけって言われたなと思い出す、千歳がマザム・ジーナなら私はあれかな 「じゃあ今年のミスコンの衣装はマルコ・パゴットにしようかな」 「! 白石! マダム・ジーナやるっちゃ!」 「はいはい、リア充爆発しろ」 君とならどんな格好でも |