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 重々しい謝罪の後、吉良さんはこうも続けた

「あの老夫婦がナマエを養女として引き取りたいと言ってきた時は断りたかった、でもそれがナマエのためだと、ナマエの幸せのためなのだと……」

「父さん、私幸せだよ、生みの親には捨てられたけど結果として大切な人たちと出会うことが出来たし、引き取ってくれた親も私を本当の娘のように育ててくれた」

 吉良さんの言葉に反論するかのごとくナマエが言葉を紡ぐ、ナマエはそこらへんの人より何倍もの苦労をしている、悲しみも寂しさもすべて一人で抱えてきたんだ
 それでも、そんな波乱万丈な人生でも楽しいと思えたのは本当の両親や北海道のおじさんとおばさん、そして吉良さんのことを本当の両親のように大切にしてきたから、大切に想われてきたから
 そして僕や白恋、雷門やエイリアの子たち、関わってきた全ての人たちを大切に思っているから、それがナマエのすごいところだ

「そしてあなたは私を沢山の人と会わせてくれた、我が子のように大切に育ててくれた、私の大切な父さんなの、それに……」

 ナマエが僕の手を握って満面の笑みを浮かべる、ああ、この妙に生き生きしている顔は何かを企んでいる時の顔だ

「大切な恋人も出来たしね」
「ナマエ!?」
「姉さん僕は認めないよ!」
「なんと!」

 感動的かつシリアスな場面を一気に混乱の渦へと変えたナマエに、僕は乾いた笑みを浮かべるしかなかった
 うれしいんだけど今言うことじゃないよね、お義父さまにはもっとちゃんとした形で挨拶したかったよ!
 もちろん北海道に帰ったらちゃんとナマエのお義父さんとお義母さんのお仏壇とお墓に行って挨拶するよ

 でもそれはナマエの魅力の一つとして収めておこう、ナマエが笑ったことによりその場にいたみんなが笑顔になる
 刹那、けたたましい轟音と共に建物が崩れ始めた、キャラバンに乗り込めという言葉に僕はナマエの手を掴んで走り出そうとしたがナマエが動かない
 どうしたものかとナマエを見れば動こうとしない吉良さんをナマエはヒロトくんと共に説得していた

「父さん、逃げるんだ、早く!」
「……私のことはいい、私はここでエイリア石の最後を見届ける、お前たちに対する最期の償いだ」
「父さんは何も分かっていない!」
「ナマエ……」
「父さんがいなくなったら私たちはどうするの? 親が子供の成長を見守らないで誰が見守るっていうの!?」
「……父さん、行こう」

 ナマエとヒロトくんの言葉に吉良さんは涙を流して謝った、それから急いでキャラバンに乗り込めばキャラバンは荒々しく外へと向かった


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