二人の連携シュートに喜ぶのも束の間、ジェネシスの反撃が始まる ヒロトと玲奈二人だけで雷門ゴールまで責めあがられ、そのままスペースペンギンを打たれてしまう しかし立向居くんの、絶対に止めるという思いがジェネシス最強のシュートを止めた 何故止めたのか玲奈たちや父さんも理解できないという顔をしている 立向居くんから綱海くんへボールが繋がり、それと同時に彼らのサッカーに対する思いが繋がっていく 一人また一人とボールがパスされていくにつれ、ボールにこもったみんなの思いは大きくなってゆく フィールドにいるみんなだけではない、サッカーが大好きな仲間たちの熱い思いがこのボールに込められている そして最後に私の思いも乗せて円堂くんへとボールを繋ぐ 「円堂くん!」 円堂くんと士郎、豪炎寺くんの三人でみんなの思いを形にした 『ジ・アース!』 その威力は凄まじく、あれほどてこずったジェネシスの選手たちを吹き飛ばしてしまう 最後に止めに入ったヒロトと玲奈も数秒の攻めぎあいの後吹き飛ばされてしまい、ボールはその威力を少しも衰えさせることなくゴールネットを焼き切る勢いで突き刺さった そこでホイッスルが響く、四対三、雷門の逆転の勝ち越し、長かったエイリア学園との戦いが、ついに雷門イレブンの勝利で終わった瞬間だった じわじわと溢れ出す喜び、みんなの、父さんの過ちを食い止めることが出来たことで頭がぐちゃぐちゃになり溢れ出てくる涙を思わず、持っていたマフラーに染み込ませてしまった 「敦也、やったよ……!」 これできっと父さんも自分の過ちに気付いてくれたはず、大声を上げて喜ぶ雷門イレブンを尻目に、私もまた喜びに破顔しつつも足はきっちりヒロトの元へ ヒロトまであと数メートル、というところでヒロトが円堂くんと私を見つめ、口を開いた その表情は柔らかく、試合中よりもずっと優しい声色が私たちの鼓膜を震わせる 「仲間って、凄いんだね」 「っ!」 気が付けば私はヒロトを抱き締めていた、今までの演技のヒロトではなくグランでもない、ただの基山ヒロトを強く抱きしめた この世にたった二人の姉弟、ヒロトの背中に腕を回し今まで離れ離れになっていた分を取り戻すように力を込めた、ああ、ヒロト、大切な私の弟 ヒロトの手が恐る恐る私の背へと伸びてきてお互いを抱き締めるような形になっていて、二人ともただただ泣いていた 嬉しいのか安心したのかもうどの感情で泣いているのかは分からない、ただ負の感情でないことは確かだ 感動の再会を果たしていると不意に声が降ってきた、その声をきっかけに名残惜しくも離れて声の主を見やれば、父さんが重々しく言葉を紡ぐ 「ヒロト、お前たちを苦しめてすまなかった」 「……父さん」 「瞳子、ナマエ、私はあのエイリア石に取り憑かれていた、お前たちの、いや、お前たちのチームのおかげでようやく分かった」 「お父さん……!」 「そう、ジェネシス計画そのものが間違っていたのだ」 間違っていたと父さんは確かに自分の間違いを認めた、これでまた昔の優しい父さんに戻ってくれる 思わず口元を緩めたその刹那、地を這うような声と地面を踏み締める音が響き反射的にそちらに目を向けた 「ふざけるな! これほど愛し、尽くしてきた私たちをよりによってあなたが否定するなぁっ!!」 「玲奈!」 止めようとするも遅く、憤慨する玲奈は足元にあったボールに渾身の力を込め蹴りつけた、言わずもがなそれは父さんの方へと向かっていく 凄まじいパワーを持つそれが父さんに当たったら危険なのは明らかだ、何とか父さんを庇おうと動いたときだった 私を押しのけ、代わりに父さんの前に飛び出し揺れたのは、私と同じ赤い髪だった 「ヒロトッ!」 |