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 練習試合は雷門の勝利だったが士郎の様子がおかしい、いつもなら取れるボールもどこかぼんやりしていて取れない、集中力が欠如している
 それは士郎の心のバランスが不安定になっているということを暗示していた、士郎の心がアツヤに負け始めているというのに私は何も出来ない


 その夜は何だか眠れなくて、テントの中を見回すも瞳子さんがいない、外かな、そう思いテントを出れば少し離れた所に瞳子さんはいた
 私に気付いたらしくこちらを見つめてきた、近づいて今まで疑問に思っていたことを口に出す

「瞳子さん、私のこと覚えてないですか……?」
「……」

 何も言わない、私の知っている瞳子さんのはずなのに……
 見詰めた瞳が微かに揺れている、動揺、しているのだろうか、確信を持って次の質問をする

「エイリア学園って、お日さま園が何か関係しているのではないですか……?」

 瞳子さんは一瞬だけ目を丸くして、ゆっくりと閉じた
 やっぱりあなたはナマエなのね、その言葉に私も確信を持って頷く、やはり瞳子さんはお日さま園に来てくれていた瞳子さんだったんだね

「やっぱり瞳子さんだったんだね」

 私の言葉の意を理解したのか瞳子さんも、大きくなったわね、と微笑んでくれた

 私は親に捨てられてすぐにお日さま園という孤児院に入った、そこの責任者が吉良星二郎さんで私を見た時は本当の子供を見ているような優しい眼差しだったのを覚えている
 たった数年とは言え大変お世話になった、その娘が瞳子さんだ、彼女が園に訪れるのは年に数えるほどだったが
 凛と佇む彼女は真っ直ぐな瞳が印象的だった、名は体を表すとはよく言ったものだ

 その瞳子さんが関係しているということはきっとお日さま園に関わることなのだろう、かつての私の家族たちが宇宙人と名乗っていたのが証拠だ

「真相を、教えて欲しい」
「……わかったわ、私の知っていることを話すわ」


 エイリア学園の真相を知った、正直吐き気がする、人工的に身体能力を上げるなんてやってはいけないこと、許されないことだ
 私がかつて父さんと呼んでいた人は間違いを犯してしまったのね、瞳子さんはその間違いを正すために雷門イレブンの監督になったらしい
 それにヒロトが、私の実弟のヒロトが私と入れ違うようにしてお日さま園に来たことも知らされた、両親の生死なんてどうでもよかった、ヒロトが無事ならそれでよかった

 私も父さんと戦おう、父さんの間違いを正すために、ヒロトたちの目を覚まさせるため

「ナマエ、ごめんなさいね、あなたを巻き込んでしまって」
「ううん、いいの」
「……それと、あなたにだけは言っておきたいことがあるの」
「言っておきたいこと……?」

 先ほどはまた違う神妙な表情で話された内容は私にとって衝撃でしかなかった

「私とヒロトが……?」

「ええ、お父さんの実の子供で私の兄姉、ナマエとヒロトにそっくりなの」

 父さんの双子の子供と名前も容姿もそっくりだなんて、何て悲しい運命なの
 しかも二人ともサッカーが好きで、海外留学先で要人に殺され事故死と処理されたなんて、父さんや瞳子さんにとっては信じがたい事実
 私は溢れ出す涙を止めるすべを知らなくて、瞳子さんに抱き締められながらただ泣いていた


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