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 イプシロンが去った後のグラウンドには静けさが戻る、小さく呻き声を上げた士郎に円堂くんが声を掛ければ大丈夫だといってどこかへ行ってしまった
 小さくなっていく士郎の後姿を私はただ見詰めることしかできず、伸ばした手も虚しく空を掴んだ
 円堂くんたちの言葉なんてもう頭に入ってこなくて、頭を冷やそうとトイレへ行って顔を洗う、もう頭がごちゃごちゃだ


 それからしばらくして、福岡の陽花戸中学というところに円堂くんのおじいさんのノートが見つかったとか何とかで、私たちは急ぎで福岡に行くことになった

 揺られるバスの中で騒いでいるみんなを尻目に一人窓の外を見ていた、頬杖をついて徐々に変化していく景色をぼうっと見ているだけ
 そんな私を士郎が心配そうに見ているとも知らないで


 陽花戸中に着いたら円堂くんが瞳子さんと共に校長先生の元へとノートを取りに行き、帰って来る頃には陽花戸中のサッカー部もグラウンドに集まっていた
 陽花戸中のサッカー部のキャプテン戸田くんは、みんな私たち雷門のファンだと言ってくれ、すぐに打ち解けることが出来た
 またも私はこの光景をただぼんやり見ていることしか出来なかった、イプシロンの一件以来どうも頭がぼんやりする

「ナマエ、大丈夫?」
「……士郎にはお見通しね」

 小さい頃から一緒にいた士郎には私のことが手に取るように分かるのかすぐに見抜かれてしまいみんながいるにも拘らず額同士をくっ付け熱があるかを確かめた
 その光景を目の当たりにしたみんなが頬を染めているが関係ないかのように士郎が熱は無いね、と呟いた
 まあ私の記憶のことをおいておけば、もうキスまでした仲だから人前でこういう事するのに抵抗はない

 そうこうしているうちに立向居くんという円堂くんに憧れすぎてゴッドハンドを身に付けてしまった少年の紹介があり、あれよあれよという間に陽花戸中と試合をする事になってしまった
 私は体調が思わしくないということもあってか、瞳子さんから練習試合で体調を悪化させられたら困ると、試合には出られなかった


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