ナマエはチャンピオンという立場であるからその席を長期間離れてはいけない 場合によってはその職を剥奪されてしまうのだ ポケギアを取り出すと着信が十数件 それもそのはず時間を見れば帰ると言っておいた時刻がとうの昔に過ぎていたのだ いつまで経っても戻らない自分を心配しているであろう四天王の人たちにどう言い訳しようかと、冷や汗が流れる 「どうした?」 「えっと、その……!」 とりあえずマナーモードを切ったその刹那、高らかに着信音が洞窟内に響き渡る 「……ごめん、ちょっと電話きた」 「何それ……?」 「えっ、ポケギア知らないの……そうだったレッドはずっとここに、ああ、とりあえず後で説明するから、はいもしもし」 『やっとでたわね……今どこにいるの、心配したのよ!』 ポケギアからは四天王カリンの声が響く 他のメンバーも一緒にいるらしく微かに声が聞こえてくる レッドはただただ物珍しくポケギアを見つめるだけ、端から見たらただの無表情だが 「うう、ごめんなさい」 『……もう、言いたいことは沢山あるけど帰ってきてからにするわ、さっさと帰ってきなさいよ』 「はい……」 戻ったら説教地獄になることは決定事項なので、早く戻らないとその分説教が長くなる なのでナマエはさっさと帰りたかったが、レッドのことが気がかりだった それを察したのか今度はレッドから話しかけてくる 「ナマエ、帰るのか?」 「えっと、うん、もうそろそろ戻らないと」 「そうか」 「レッドは……?」 「ここにいる」 「そっか……」 帰る準備、と言ってもほとんどないのだが、レッドに会えたときのためにと用意してきて荷物を彼に手渡す 「……レッド、強い相手を探してるならリーグに挑戦してみなよ」 「したことある」 「三年前の話でしょ? 今のリーグは強いよ」 自信満々に言い放つナマエに対してレッドもわかった、と興味を持ったようだ しばらくしてナマエはシロガネ山を相棒と共に下山していった 静寂だけが取り残される |