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- ナノ -

 グリーンとお茶会をした数日後、それは訪れた

「ひまね」
「ライ……」

 ここしばらく挑戦者が途絶え、ナマエは相棒のライチュウとソファーに座り暇を持て余していた
 つまらなそうに呟けばライチュウは寝ており、短い鳴き声を漏らす
 呑気ねぇ、と相棒の頬をつついてやると小さく身じろぐ
 控え室のソファーに背を預け天井の隅のスピーカーを見やる、簡素な部屋に置いてあるこの小さなスピーカーが挑戦者の来訪を知らせてくれるのだ

 ここしばらくこのスピーカーから一切の音が鳴らないのだ、つまりは挑戦者が来ないという状態がここ数日続いている

「ほんとひま、」
「ちゅー……」

 隣で寝るライチュウに寄り添い頭をなでる、すると幸せそうにナマエに身を寄せてくる

「幸せそうねー」

 ふふ、と笑ったナマエの脳内に一瞬、幼なじみの顔がちらついた
 先日の出来事が頭の中を駆け巡る、自分で条件を出しておいて勝手に取り消したこと、自分の身勝手さに嫌気がさす

 下山してほしがっているグリーンと下山したがらないレッド、この二人の間に挟まれるナマエ
 レッドが下山してくれれば母親は安心できる、もちろんグリーンとナマエも肩の荷がおりることは間違いない
 けれど本人は強さを求めて山に籠もる、確固たる意志を持って

 どうしてこうも上手く行かないのだろう、大きな溜め息を吐けば室内にアナウンスが流れる

『挑戦者が来ましたのでチャンピオンは至急戦闘準備をしてください』

 抑揚のない、無機質な音声が挑戦者の訪問を告げる
 隣で寝ている相棒を起こそうと振り向けばすでに起きており、これから行われるであろう戦闘を前に興奮を隠せずにいた

「らいらい!」
「はいはい、行きますか」

 ナマエが重い腰をあげ、テーブルに並べてあるモンスターボールを丁寧に腰に装着する

 挑戦者が待っているであろう部屋へと続く扉を前に、一度、深く深呼吸する
 新しい空気を取り入れ、先ほどまでの中途半端な気持ちを切り替えればライチュウに促されるまま扉に手をかける
 真っ直ぐ、前だけを見るナマエの瞳からは一切の迷いが消えていた、のに


「……何で、」

 ここにいるの、そう続けようとして言葉が喉で詰まる
 そこにいたのは実に数日前、この場所で自分が負かした幼なじみだったのだ


今の私にはわからないことだらけで


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