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▼野球少年と文学少女01

 桐青高校には月に二回発行される学校新聞がある、内容は学校行事や部活の大会のことなど様々だ
 普段学校と関わりのない親御さん宛てにだろう、だがほとんどはゴミ箱行きになる運命を辿ってしまう
 俺もその内の一人だが、必ずと言っていいほど読むものがある、それは四枚綴りの学校新聞の一番最後の一枚
 そこには文芸部のコーナーと称される、文芸部員が毎回代わり代わりに書いている文章が掲載されているのだ
 ほとんどがペンネームを使っていて誰が書いているのか分からないが、その中で一人だけ本名を晒して文章を載せている奴がいた

 名字名前、彼女だけが異才を放っていた

 彼女の文章が掲載されるまでは恋愛や青春などいかにも学生が書く文章って感じで、毎回さらっと流し読みをしていた
 しかし七回目の学校新聞だった、その話は学校内でも小さく話題になった
 タイトルは至って普通だったのでいつものように読み流そうと思ったら内容が酷かった、良いい意味でも悪い意味でも
 内容は麻雀の話なのだが原稿用紙二枚程度の字数にびっしりと、一回の戦いの一巡しか描かれていなかった、だがその文章だけでその場の緊張感や手に汗握る感覚などが読み手に伝わってきた
 専門用語を織り交ぜつつも高校一年の俺でも解るように書かれていた、いつの間にか俺は何度も読み返していた
 それのどこに話題性があって酷いのかというと、簡単に説明するとテーマがギャンブルだったのだ、しかも賭けるものは金と命という高校生が題材にするのに珍しく、話題になった
 普段は目を通さずゴミ箱へと直行させる生徒もその文章を読みこんでいた
 俺は作者名を知りたくて、いつもは見ないタイトルの下に目を走らせた、どうせペンネームだろうと思ったが俺の意に反してそこにははっきりと名前が書かれていた

「名字名前……」

 それが名字名前を知ったきっかけであり、俺が彼女に興味を持ったきっかけでもある


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