▼幸村双子は死神10 「!」 さすがの光でも気づいていなかったらしい、私の言葉に二人はやっぱり、と呟いた 「生まれた時から病弱でね、中学二年の夏に入院して、秋に病死」 「……」 「それから死神になったの」 「せやったんか……」 「光も知ってるでしょ、浮竹さんが私に死神になるよう言ってくれたの」 私が死神になるきっかけを作った人の名前を出せば光は、ああ、と声を漏らす ほんと、色々と情けない、初めて会った人にこんな醜態をさらすなんて 「せやから幸村って名乗りたなかったんか」 「そうよ、もしも精市がどこかで私のことを知ったら大変なことになるでしょう?」 「まあ、せやな、死んだ人間がおるっちゅうんやから騒ぎにならへんのがおかしな話やな」 精市に拒絶されたら、そんなことを考えるだけで怖かった、だから幸村の姓ではなく財前の姓を借りたのだ まあいつかはバレると思っていたことだ、潔く話せば事情を把握してくれたらしい、私も気持ちを落ち着かせ、積まれたビデオを指差す 「蔵ノ介、このビデオ借りてもいい?」 「おん、返すんはいつでもええから」 「ありがとう」 それから二言三言話たら二人は帰路についた、私は二人を見送ってから伝令機を手に取る テニスのビデオをセットしながら目的の番号へと発信すればすぐに声が聞こえた 『はい、こちら十二番隊技術開発局の阿近です、幸村隊長何かありましたか?』 「阿近くん、丁度良かった、小型カメラと小型録音機をそれぞれ一台ずつ欲しいの、高性能なやつをなるべく早く、出来上がったら誰かに持ってこさせて」 『? はあ、わかりました』 それでは、と用件のみを伝えて通話を終える、いじめなんて現場の映像を押さえてしまえば大丈夫だ、光に聞いたところ早川という女は自らを傷つけて蔵ノ介のせいにしているらしいから証拠を押さえるのなんて簡単だろう とりあえず私は朝までに蔵ノ介に借りたビデオを観なくてはいけない、義骸の身体能力は人並み以上と言っていたが私自身のブランクを考えて、二回、しっかりと観なければいけない 今日は眠れないかもしれないわね、リモコン片手に笑った |