▼幸村双子は死神02 満開の桜の花びらは、はらりと執務室の名前の元へと舞い落ちる 綺麗なそれを見ると悲しい笑顔も思い出す、脳裏に焼き付いて離れない大切な人の笑顔 頭を左右に振って仕事に戻ろうとすると、窓から一羽の地獄蝶が三番隊舎に入り込んできた 『三番隊幸村名前隊長、至急一番隊舎に来られたし』 伝令を受け取り、三と書かれた羽織りを翻し斬魄刀を腰に差す、イヅルに言付けし執務室を後にした 「来たか…」 「山本総隊長、何でしょうか?」 いつもとは違う、一隊長としての口調で受け答える名前に対し、山本総隊長と呼ばれた翁は口を開く 「実はお前さんに任務を頼みたいのじゃ」 「任務ですか……、はい、わかりました、どういった内容でしょうか」 名前が任務内容を訊ねると山本の眉間のシワが数本増えたのが目に見えてわかった 口にするのもはばかれるような内容なのか、例えば生命に何らかの危険が生じるような ごくり、名前が不安を飲み込む音が響く、もしかしたら三番隊長に就任して初めての危険任務になるかもしれなかった 「現世に虚が現れているのはお主も知っておるな?」 「はい……しかし、それは各地区担当の死神が駆除しているはずです」 「そうなのだが……最近、急激に数が増しとるんじゃ」 「……」 「それでお主には現世に赴いて虚を殲滅してほしい」 「わかりました」 現世にはあまり行きたくない名前だったが任務となると話が別だ、すぐに承諾の意を山本に伝える まあ、任務については決定事項なので拒否権などなかったので返事をするまでもなかったが 内容は虚の殲滅のみなのだからさっさと終わらせて戻って来よう、そう頭の中で考えた次の瞬間、山本の口からとんでめない言葉が発せられた 「お主には学生としてしばらくの間現世に滞在してもらう」 「……は?」 「なぁに、虚の出現数が一定に落ち着くまでの間じゃ」 「……はい、わかりました」 はあ、溜め息を吐きさっさと帰ってくることを諦める 話はそれだけのようなので部屋を出ようと踵を返す、数歩歩いたところで後ろから再び声がかかった 「……あぁ、それとのう」 「まだ何か……?」 「九番隊の四席が虚殲滅の任務に行ったきり帰って来ない」 「九番隊第四席……」 「まぁ、現世で遊び呆けておるんじゃろう、一発渇を入れておいとくれ」 「わかりました」 「頼んだぞ」 山本との会話も完全に終わると早々に三番隊舎に戻り先の内容を吉良に伝える 名前が不在の間三番隊を率いる立場になる吉良は少々顔に疲れを見せたが、お気をつけて、そう頭を下げた |