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▼アイドルでヒーローになるんです!

 いつもならば平和の象徴を取り上げているメディアがここ数日は平和の象徴ではなく一人の女の子に注目していた。

『アイドルの輿水名前がヒーローに!?』
『雄英高校ヒーロー科の一般入試を無傷で合格!?』
『アイドル引退でヒーロー路線か!?』

 そんな話題が連日の週刊誌やワイドショーを賑わせている。
 輿水名前。アイドルとしてデビューして早数年、トップに最も近いと云われている大人気アイドルだ。
 その輿水名前が最難関とも言える国立雄英高校のヒーロー科の一般入試会場にいたのをある雑誌記者がスクープしたのが切っ掛けで連日メディアが騒いでいるのだ。
 未だ合否も出ていないにも関わらず合格している体で話は進みこのままヒーローに転身するのではないかとも噂される。

 仄めかされるアイドル引退説にファンは血の涙を流し、所属プロダクションへの問い合わせが殺到。
 ワイドショーではアイドルにヒーローが務まるのかと批判的な意見が多く、ネットでは様々な意見が飛び交っている。

 そんな折に開かれた記者会見。勿論輿水名前の進路についてのものだ。生放送で行われたそれを見るべくファンは仕事を休んでまでテレビにかじりついて見守っていた。
 プロダクションのお偉いさんを共だって会場に現れた名前はいつも通り自信に満ちた顔をしている。

『この度は我がプロダクション所属の輿水のためにお集まり頂き誠にありがとうございます。早速ではございますが、時間もあまり無いので本題に入らせて頂きます。ここ数日論議になっている問題について、輿水の方から報告があります』

『ボク、輿水名前は国立雄英高校ヒーロー科に合格したことをここにご報告致します!』

 名前の言葉に会場は一気にざわめきシャッター音で煩くなる。
 ネット上の大型掲示版では、不安が的中したファンの嘆きだけではなく、一アイドル如きが入学出来てしまうなんて雄英も質が落ちたなどといった辛辣な意見までが書き込まれ始めていた。

『我々からは以上です。何かご質問は……』
『ヒーロー科に通うということはヒーローを目指すということでよろしいのでしょうか? その場合アイドル業はどうするのですか?』
『ボクはアイドルを辞めませんよ! アイドルでヒーローになるんです!』
『事務所とも綿密な打ち合わせの結果、学業を優先した上でアイドル業も熟していく予定ですので今後とも輿水をよろしくお願いいたします』

 芸能活動との両立をするヒーローもいるが大抵がヒーローになってから芸能活動を始めたものばかりだ。
 芸能関係からヒーローへ転身した例もあるがヒーロー科へ通っている期間休業するか、芸能活動との兼ね合いで私立のヒーロー科に進学するパターンばかり。
 故にこのアイドル業を熟しながら雄英高校ヒーロー科へ通うという名前の選択は至難を極める結果となろう。

『オールマイトが雄英の教師になるとの噂もありますがそれと関係はあるのですか!?』
『全く関係ありません! ボクはボクの選択で、確固たる信念の元この道を選びました。絶対に妥協はしません』

 そもそも雄英高校ヒーロー科の一般入試を合格する程の実力が本当にあるのか俄に信じがたかったが、その真っ直ぐな瞳に嘘は無い。
 彼女の出ているバラエティー番組を見たことがある者ならば分かるが彼女は他のアイドルに比べて肝が座っているし中々タフだ。時にはバンジージャンプやスカイダイビングといった芸人張りに体を張ったパフォーマンスも披露済みだ。
 そんな彼女ならばどんな困難も乗り越えていけるのでないかと、批判的な意見が多かったネット上でも徐々に彼女の味方が増えていく。

『輿水はアイドル業を熟しつつしっかりと受験勉強に励んでいました。推薦入試を受けられる成績も持ち合わせていましたが敢えて一般入試を受けさせ、実力で合格を勝ち取りましたので、我々も彼女の選んだ道を応援しようと決断に至りました』

『他に質問がないようでしたら会見を終わりたいと思います』
『はい! 輿水さん、最後に一言お願いします!』

 慌てて手を上げた記者の言葉に名前は正面カメラに視線を向けて満面の笑みを向ける。

『フフーン。これからもカワイイボクの活躍を楽しみにして下さいね!』


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