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▼07

・名前と山岳、高一

 本日のレースで走る山道のスタートラインにて。真波と黒田の横でサーヴェロと共に立っているのは新開の妹である名前。
 彼女は女子であることから、インターハイに出場できない立場であり今回のレースに参加する意味は全くない。
 しかし彼女自ら、二人の邪魔をしないからとレースへの参加権を得たのだ。

「名前ちゃん、俺負けないからね!」
「私も、負けないよ」

 意気揚々とヘルメットを被る真波に、名前も愛車のタイヤを触り状態を確認している。
 俺は無視かよ、と黒田が内心で一人ごちているともうすぐスタートであることが知らされる。

「勿論、黒田さんにも負ける気ありませんから」

 三者三様のスタート体制に入ったところで名前の声が聞こえた。黒田がその言葉を脳で分解すると同時、位置について、と平部員が口を開いた。
 


 彼女の走りを見ていたレギュラーメンバーに、兄である新開は言う。

「女だからって舐めてっと驚くぞ」



「名前は速い」

「何だあの走りは! 全くブレがないどころか息一つ乱れていないではないか!」
「ギア切り替えるタイミングもばっちしダ」


「スタート直前にタイヤと地面を触っていただろ? あれでタイヤと路面の温度・状態を把握して、それに合わせた最適な走りをしてるんだ」
「そんなこと出来るんですか!?」
「出来るからやってるんだよ。しかも最早癖のレベルでだ」


 加えて、天候やダート情報
 
 例えば道路の舗装が剥がれていたり、例えば何気なく転がっている小石や砂利、例えば木の枝に留まっている小鳥、例えば枝から落ちてくる葉っぱ。
 これらが次の瞬間にはどんなロスに繋がるかは分からない。一秒、いや、コンマの世界でロードレースの勝敗は決まる。
 だからこそ彼女はタイヤの状態、天候、道路の素材、路面状況などを瞬時に把握して最適なルートを導き出している。ギアを切り替えるタイミングすら計算し尽くされているというのだ。
 よりロスがなく、より早くゴール出来るように。

「それを自然とやってるんだよ、あいつはさ」
「道路の素材なんて考えたことネェ……」
「小三の時図書館で一通り勉強してた」
「マジかヨ」
「我が妹ながら天才だわ」


「しかし、あまり楽しそうではないな」
「そりゃそうだろ。楽しそうに山登んのはお前や真波くらいだロ」
「しかしな、前に何度か名前と走った時はいつも楽しげだったのだ。実に楽しそうに上っていたのだ」
「名前は悔しいんだ。女に生まれたってだけで俺と同じレースに出られないのが」
「“俺と”って……シスコン」


「男の子より速いのに大会には出られないんだよ……ただ女ってだけで」



(赤羽か真波落ちにしたかったけど途中で飽きたため打ち切り)


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