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▼02

「明日のレースに備えたいんで私そろそろ帰ります」

「だって、明日のレースは男女混合アンダー17だから、隼人くんと悠人と三人で走れるんだもん」



「勘違いしないで。私は殺せないから諦めてるんじゃない……殺す気がないから何もしないだけ」


「私は地球の未来にも百億円にも貴方の命にも興味なんてないんです。だから貴方を殺しません」


「私の家族に何かするというのならば、私は貴方を殺します」


「私は兄が好きです。それと同じくらいに弟も好きです。二人とも、愛おしくてたまらない」

 変な誤解を生まないためにも、兄弟愛の範疇であることを付け足しておく。
 現に目の前の生物はピンクにしていた顔色を元に戻している。何を想像したんだこの野郎。


「あの二人が生き生きと走っている姿を見るのが何よりも好きなんです」

 それは一種の義務感でもある。この世にたった二人しかいない兄と弟なのだから彼らを愛することが当たり前である。それと同様に父母を愛し、慈しむことが自然であるように努めた。
 前世の自分に成し得なかったことをするのが罪滅ぼしになるのだと信じて。

「本当に、二人の未来を守らなければならない時が来たら……私は私を道連れにしてでも貴方を殺します」

「先生のせいで二人がロードを続けられなくなるとしたら、私は貴方を躊躇なく殺すでしょう。それが私の愛です」

 それが彼女の贖罪である。


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