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▼Do not run away from yourself.

 焦凍の上に馬乗りになり両手を押さえつける。
 虎としての本能か、無意識のうちに舌なめずりをしてしまう。


「焦凍、右側(そっち)だけじゃ永遠に私には勝てないよ」

 焦凍の左頬に手を添え、顔を近付ける。
 プレゼント・マイクが不純異性交遊だ何だとの煩いが今はそんなの関係ない。
 これは私と、焦凍の問題だ。

「左側(こっち)を使えば、私は防ぐ術なんて持ってないから、簡単に倒せるよ?」

 輪郭をなぞるように触れて挑発する。


「ほら、女に組み敷かれてる焦凍のみっともない姿、沢山の人に見られてるよ」

「……名前、親父に何か言われたのか?」
「っ! 今はそんなの関係ないでしょ」
「名前は俺に嘘をつくとき、必ず耳が垂れるから分かりやすいな」
「え、うそ!? 何それ初耳なんだけど!」
「ああ、可愛いから黙ってた」
「……」


「私もやめるから、焦凍も、もう自分を否定するのはやめようよ……」

「その半身だって、焦凍自身なんだから」
「……!」
「私たちいい加減、前に進もうよ……!」



「私は……っ。私は、焦凍に何もしてあげられないの?」

 ぽろぽろと涙が溢れて焦凍の頬を濡らしていく。
 名前の視界が滲む。

「違う。俺は……お前が……」

「名前が、居てくれたから、おれは……」


「意地っ張りなとこ、昔から変わらないね」

 あの頃は稽古が終わったら二人ともへろへろで、伯母さまか冬美さんが夕飯を知らせに来るまでその場で寝ちゃったんだっけ。


「あの時焦凍のお母さんが言ってくれた言葉、覚えてる?」
「あの時……」
「私は思い出せたよ……」


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