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▼野球少年と文学少女10

「好きです、付き合って下さい」

 ありきたりな告白だったけど私も彼に少なからず好意を寄せていたことは事実なので彼に肯定を意味する返事をした
 平たくいえば、不束者ですがよろしくお願いします、そう応えたのだ
 その時から私は彼を本山くんから裕史と呼ぶようになり、彼もまた私のことを名前で呼ぶようになった



「裕史、」
「ん、どした?」

 俺が自分のベッドを背にして来週提出の課題をしている時、名前が俺のベッドで雑誌を読みながら俺に話しかけた
 今日は土曜日で野球部の練習は午前中だけだったので午後からはずっと二人で俺の部屋にいた

「次回の学校新聞の文芸部のコーナー、私が書くことになったわ」
「お、楽しみにしてるわ」
「それで私と裕史の馴れ初めを書こうと思ってるの」
「えっ!?」
「だけれど止めることにするわ」

 いきなりなにを言い出すのかと思えば、俺たちの馴れ初めってなんだよ、恥ずかしいことこの上ないだろ、と思ったが彼女はすぐにその考えを止めてしまった
 恥ずかしい反面ちょっと期待していた、彼女の目から見た俺たちの物語はどんな風に見えているのか、素直に気になったからだ
 でもきっと野球部の奴らに冷やかされるのがオチだ、特に山ちゃんと慎吾には……

「だから裕史について書くことにしたわ」
「そう、俺についてね……ってまじでえええぇ!?」
「ええ、そうよ」

 何を驚いているの、と相変わらず涼やかな顔で俺を見る、正直馴れ初めの方が良いかもしれない
 でも彼女から見た俺はどんな人間なのだろうか、かなり興味がある
 っていやいやいや、やっぱり恥ずかしいし、全校生徒とその親御さんに俺を知られてしまうってことじゃないか
 それは恥ずかしい、まじ恥ずかしい、やめてくれ

「恥ずかしいんだけど」
「決定事項よ、覆さないわ」
「ドエス!」
「裕史がドエムになれば問題は無いわよ」


一番盛り上がるところで力尽きました


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