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▼くうすけクロウ 壹

 帝国学園との練習試合をきっかけに松野空介という奴と仲良くなった、ボーダーの猫耳帽子を被っていて猫のような奴だが実際に性格も猫のようだった
 サッカー部に正式に入部するまでは飽きっぽい性格のため特定の部に所属せず試合のときなどに助っ人として活躍している器用な奴で、初めてやるスポーツでも難なくこなして結構勝利に導いているという噂をよく聞いた
 俺は自分で言うのも何だが結構普通で何事も中途半端な人間だから同じクラスの松野の噂話を聞くたびに俺とは性格もタイプも違ったので少し敬遠していた
 だけど実際に話してみれば普通に良い奴ですぐに仲良くなった、時には冗談を言い合ったりして今ではお互いが気の許した親友だった

 その日もいつもと同じく部活が終わりマックスと一緒に帰るときのことだった、バスケ部の一人だろう男子が俺たちの所まで走ってきたので何事かと立ち止まればそれはマックスへ助っ人の依頼だった
 サッカー部に正式に入部しているマックスだがいつものノリで助っ人の依頼を二つ返事で承諾するのかと思いきや奴の口から出てきた言葉は拒否だった

「悪いけど、もう部活の助っ人はしないって決めたんだ」
「……そうか、わかった」

 バスケ部の奴は少し残念そうな顔をしてそのまま帰っていったので、俺が本当に良かったのかと聞けば今はサッカーが楽しくて他の事を考える暇はないのだと笑っていた、俺も釣られて笑みを浮かべる
 飽きっぽいマックスが一つのことに執着を見せるのは珍しいな、サッカー部に入るときも飽きっぽいけど円堂と一緒なら飽きなさそうだと笑っていたのを思い出す、それほどにサッカーが楽しいのだということは俺としても喜ばしいことだ

 それからはいつもの道をいつものように談笑しながら歩いたのだが今日に限ってカラスの鳴き声が妙に耳につく、この時間帯はあまりカラスが現れないのだが今日のこの道だけは違っていた
 いつも通る住宅街なのに人は俺たち以外一人も居らず電線には無数のカラスが連なり空を飛んでいるカラスたちと一緒にかあかあと鳴いている
 いつもならば夕焼けの綺麗な道なのだが大量のカラスによって薄暗く感じ不気味でならない
 マックスも同じことを考えていたのかさっさとこの道を通ってあの角を曲がろうと俺を促した時だった、一羽のカラスがマックスの頭の上にとまった

「うひゃあっ!?」
「なっ!?」

 しかもそいつは他のとは違い全身が真っ白いカラスで、唐突な出来事に動けずにいるマックスを知ってか知らずか優雅に羽を休めているそいつは、真っ白い体とは正反対の闇のように暗い瞳を俺に向け、他のカラスと同じ声でかあと鳴いた
 そして白い翼を広げるのを何かの合図としたかのように電線や空にいたカラスも羽を広げマックスの後方へ一斉に飛んでいった、どこかの写真展にありそうなその光景があまりにも神秘的でいて不気味だったのだけは覚えている
 マックスがカラスを見ようと振り返るもカラスはすでに夕闇に消えていった後で、マックスのニット帽と道路に少しだけ抜けた羽が残されれていた
 しかしその羽は先ほどマックスの頭上で羽を休めていたカラスが残していった物のはずなのに真っ白いあいつとは正反対の黒い羽だった
 カラスたちが一斉にどこかへ消えていったためいつも見ている綺麗な夕焼けが広がっているだけ、大群で飛んでいったはずなのに羽の音が聞こえなかったのは気のせいだと思いたい

「何だカラスかー、びっくりした」
「いやいや、あのカラス白かっただろ!」
「何言ってんの? 頭の上に乗ってたんだから見えるはずないって、っていうかこの羽黒いじゃん」

 夢でも見てたんじゃない、と笑われてしまった、確かに俺はその白い体を見たはずなのだが手元にあるのは黒い羽で、俺は夕方だけど白昼夢でも見ていたのだろうか
 しかしあの闇のような瞳を向けられたときの嫌な感じは夢でないと思いたい、だが当の本人は気にしていないようなので俺も気にしないようにしよう


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