夢中でただ目の前の敵を倒し続けた。たまにナギの計らいか援護が来てカルラ達と入れ替わって補給したけれど、それでも持たなくてすぐに前線にふたりで戻るのを何度も繰り返す。
出来るだけ周りとの連携を意識して、孤立するものがいないようにナギに指示をしてもらいながら、それでも迫るルルサスの数は圧倒的で私達は徐々に後退するしかなかった。端にある教室から壊されていき、怪我人は地下に避難させて行ったけれどそこも安全かは分からない。赤い鳥のようなものが魔法局から飛び立った時は、新しいルシが参戦してくれるのだと士気が上がったけれどそれは神殿飛び去ってしまった。上がった士気がそれ以上の落差で下がる。体力は回復出来るけれど、心はどうしようもない。
諦めた人が倒れて、院に籠って、前線に出る人数は減る一方だった。

彼は諦めない。
きっと0組の皆も諦めていない。
なら、私が諦める理由もない。

もう何体目かも分からなくなったルルサスにとどめを刺して、院の背後に浮かぶ建造物に目を向けた。あれだけ遠ければ0組の皆が見える訳もないけれど、彼らの顔が思い出せることを確認したくて何度も見る。まだ彼等だって諦めていない。


「ツバメ、裏に数体侵入した。対処が間に合わない、来れるか?」

「分かった。どこ?」

「階段でいい」

「了解です」


周りの候補生に出来る限りの補助魔法を掛けて、彼も引き連れてナギの指示のあった裏に回る。
倒れた人が生きているのか曖昧で、そもそも回復するよりもまず殲滅しなければそんな余裕も作れない。
とにかく撤退を優先し、彼とひたすら目の前の目標を叩く。お互いにカバーしながらひたすら戦ったけれど、どうも様子がおかしい。
明らかに、数が増えている。
通信で入る各部隊の情報でもそれが窺える、まるで、私達がどこまで耐えられるか試しているようだ。……意思があるのかなんて、分かりたくもないけれど。

ただ、倒すことだけを考えてルルサスの固まっている箇所に突っ込もうとすると、不思議なことが起こった。ルルサスがすべて上を向いて停止している。様子を見るために距離を取ったままでいると前衛にいた彼も引いて隣に並ぶ。
彼が前を警戒しているうちに同じように上を窺い、気付いた。


「……雨が、止んでる……」


ガシャリと金属が触れ合うような音が聞こえて前を見ると、あれらが崩れるところだった。ガシャリガシャリと俯いて、次々に崩れ落ちていく。とどめを刺そうとファントマを引くと、信じられない量の光が残骸から抜け出した。それを引き寄せようとしたけれど、それらはすべて惹かれるように空に上って行く。

場違いに、見とれるほど綺麗だった。
讃美歌のような音を立てながら、あちこちから光が昇って行く。
彼と無言で眺めるうちにも崩れるルルサスから光が抜けていく。増える様子もない。
私達は、乗り切ったのだろうか。終末を。
力が抜けて崩れかけた体が横から支えられて、思わず彼にしがみ付いた。
こんなめちゃくちゃな状況を誰が打開したかなんて決まっている。


「皆、すごいなあ……」


泣き笑いみたいなそんな声が漏れ出て、彼も笑っているような声で「そうだな」と静かに同意した。通信を通さなくても、歓声が聞こえる。
とても高いところに確かに青い空と虹が見えた。



13.09.22



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