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「…疲れた」
「ふふ、お疲れ様」
街から少し離れれば道は街灯と月明かりだけになりどこか頼りない感じ。
「今日は飛び込みの団体さん多かったからねー」
「あの人数で予約してこねぇ神経が理解できねぇ」
「それキッドくんと同じこと言ってる」
横で笑う○○に目をやると流石に疲れたのか少し表情に出ていた。
「…あいつとどっか行くのか?」
「え?」
「いや、さっき時間とか連絡するつってただろ」
「明日キッドくんと映画見に行こうってなって」
手の空いた時間に映画の話になり見に行きたいのが被ったとかでそうなったらしい。が、俺はあいつが映画には興味がないと絶対の自信を持って言える。恋愛ものときたら尚更嘘だろう。
あいつの興味は○○だ。
「俺も行っていいか?」
「うん、いいんじゃないかな?」
「…○○はあいつと2人じゃなくていいのかよ?」
「ん?全然大丈夫だよ?」
質問の意味を分かって言っているのかどうなのか。ただ、○○の中でのユースタス屋の存在が特別でない様子に少し疲れが取れた様な気がした。
ローくんも見たかったの?と聞いてくる○○に少し濁しながら返事を返すがよほど楽しみなのかすぐに映画の話になった。
「それじゃ、私こっちだから」
「遅いし送ってやるから後ろ乗れよ」
「え、いいよ!ローくんこっちじゃないし遠回りになっちゃう」
「そんなにかわんねぇから大丈夫だ」
「でも疲れてるでしょ」
申し訳ないからなのかなかなか首を縦に振らない○○。
「夜道で襲われたくなかったら黙って送られろ」
「…ありがとう」
サドルに跨り視線を送れば申し訳なさそうに後ろに乗る○○の手を取り腰に持っていく。
「ちゃんと持ってねぇと落ちんぞ」
「そんな速くないでしょ?」
「試してやろうか」
「ごめんなさい、安全運転でお願いします」
少し焦った様に力を込められた○○の手に思わず顔が緩み急いで前を向いた。
「ユースタス屋には俺も行くこと言うなよ」
「なんで?」
「あいつのアホ面見てぇからな」
「あはは!確かに!」
先制
(抜駆けさせるつもりは毛頭ねぇからな)
(キッドくーん!)
(○○!…ってなんでテメェもいんだよ!)
(俺も映画見たかったからな)
(嘘つけぇ!!)
(そっくりそのまま返してやるよ)
end..
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