『クリスマスプレゼント(12.24ver)』の続き。
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「メリークリスマス!」

風丸がそう言って玄関のドアを開けたのは、26日の夜10時すぎだった。
「おいおい今日が何日かわかってんのか?」
そう言いながら振り向くと、そこには右手に大きなスーツケース、左手にそれに負けないくらい大きなバラの花束を持った風丸が立っていた。
「う、わあ…」
…思わず声が漏れてしまったが今の『うわあ』は嬉しかったわけではなくて驚いた時の『うわあ』だから。
と、そんな俺の心の中の弁解など無視して風丸は満足げに笑っている。
「なんだよそれ…ファンからのプレゼントかあ?」
「そんなわけないだろう…全く、強がるのもいいかげんにしろ」
俺は立ちあがって風丸のそばによる。外はずいぶんと寒いのだろう。風丸の鼻の頭が少し赤くなっていた。
「メリークリスマス、不動。ごめんな?一緒に過ごせなくて」
「…ん、どーも…」
ガサッと大きな花束を差し出される。こんなデカイ花束貰ったことねえよ、どうやって持つんだ?
俺は両腕で抱えるようにして花束を受け取った。バラの香りがふんわりと香ってきた。本物の匂いは初めて嗅いだぜ。バラの香水とかは苦手なんだけど、本物は結構いいじゃん。
「おいおいこんな大量にどうするんだよ…100ある?」
「おしい。108本あるぞ」
「108?正月にちなんで煩悩の数か?」
「あははっそれは思いつかなかったなあ」
バラの花束なんて貰う日がくるとはね。花束を抱えたままソファに座る。ふと鬼道のセリフが頭をよぎった。
「パーティーはどうだった?」
「知ってたんだ」
部屋着に着替えた風丸が隣に座る。
「あたりまえだろ。俺も鬼道に会いたかったな」
「その鬼道くん曰く、俺ってシアワセなんだって」
「え?」
やっぱり風丸が隣だと落ち着く…なんてな。
「鬼道が?不動は幸せ者だって言ったのか?」
「幸せ者、つか『それが幸せってことだろう?』って」
「それってどれ?」
「ん?…酔ってて忘れた」
「えー」
少しの間があった後、風丸がつぶやいた。
「…鬼道も認めてくれたってことかな」
俺は聞こえなかったふりをした。でも、俺もそう思う。
「そーだ 鬼道くんからのプレゼント、キッチンにあるぜ。高そうなワイン」
「お、そうか」
「俺からのは、鍋にあるから」
「え、ごめん。夕飯外で食べてきちゃった」
「…いーぜ、朝飯にすれば」
「ん。そうする。ありがとう」
風丸は俺の頬にキスをした。1週間ぶりの風丸の唇は、まだ少し冷たかった。








目が覚めるとバラの香りがした。違和感と疑問を覚えたがすぐに自分が不動に送ったものだと思いだす。布団から出ている肩や顔が寒い。不動は頭まで布団をかぶって眠っていた。キスしたいなー。でも布団捲ったら起きちゃうかな。
「ん…」
不動はますます体を丸めてしまった。キスは起きてからにしよう。
時計は朝8時を指していた。ベッドから出てリビングに向かう。朝食は早く起きた方が作るルールだ。
あ、そうだ
確か不動がクリスマスプレゼントに作ってくれたものが鍋にあるって言ってたな。

カチャ

「!わ」
鍋の中には緑の包装紙に赤いリボンでラッピングされた10cm四方のプレゼントが入っていた。

「不動!ありがとう!」
寝室に行くと、不動は布団から頭だけ出してメールを打っていた。
「…んー…」
「ありがと!」
「2回も言わなくても聞こえてるっつーの」
ベッドに腰掛けて丁寧に包装紙のテープを剥がす。この時のワクワク感というか高揚感は何度味わってもたまらない。
「…鬼道クンにバラのこと聞いたんだけどさ」
「え!鬼道に?…108のこと?」
「そう。『バラが108本て意味知ってるか?』って聞いたのに返事がさ、『そうか。おめでとう』だって」
鬼道は意味を知ってるみたいだ。少し頬が熱くなるのを感じながら小箱を開ける。
「あ!」
中身は腕時計。前に雑誌で見たやつだ。俺の『いいなあ』という独り言を不動は覚えてくれていたのだ。
見ると不動は白々しくメールを打っている。
「…こーたーえに…なってねぇ…っと」
「俺、幸せだよ」
「送信」
「俺達、幸せだよな?」
「…お前が鍋に火つけたら面白かったのに」
照れ隠しする不動を無理矢理仰向けにして唇を奪う。
「…風丸…寒い…」
「ん」
布団ごと不動に覆いかぶさった。
今日は2日分、愛し合おう。

END
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メリークリスマスその2。
使い古されたネタだがいいじゃないか!
2011/12/26
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