20歳前後。風丸と不動は同棲中。鬼道さんはイタリアリーグで活躍中。
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風丸は俺が笑うと笑う。

例えば俺が何か食べて「美味い」って思ってると何も言ってないのに風丸は「よかった」って言ってニコッと笑う。昔はそれが不思議だったんだけど、最近ちょっとわかるようになってきてさ。俺も風丸が笑ってくれることがちょっとだけ嬉しくなってきて…って、風丸に言うなよ。そしたらなぜか最近近所のガキどもに声かけられるようになって。サインくれ、とかサッカー教えてくれ、とか。前から何度も顔合わせてたのに急にだぜ。そのこと風丸に話したらさ「お前、最近よく笑うようになったからじゃないか?」だって。
なぁ、久しぶりに俺見て、俺、前より笑うようにとかそんなことねぇよな?

「そうか…幸せなんだな」
「……はぁ?」

今日はクリスマスイブ。相方の風丸くんはイブもクリスマスも大事なお仕事が入ったせいで家にも帰ってこれない。するとどこから嗅ぎつけてきたか知らないが佐久間と源田が家に押しかけてきた。それと懐かしいドレッドヘアー。あとそのサングラスは何?イタリアで流行ってんの?
そんなわけで男4人の寂しいクリスマスパーティーが始まった。佐久間のせいで源田はすぐに酔いつぶれ、玩具を失った佐久間も飲むだけ飲んで眠ってしまった。俺はいつも風丸と一緒に座るソファに鬼道クンと座っている。久しぶりの鬼道になんだか少し緊張する。ワインを飲む姿がすげー大人びて見えたから。うるさい2人が眠ったので、ゆっくりイタリアの話でも聞こうとしたら「それよりお前の話を聞かせてくれ」と言われたのでさっきの話をした。久しぶりに会った鬼道なら、俺がどう変わったか指摘してくれるかと思った。なのに返事がこれだ。
「そうか…幸せなんだな」
鬼道は少し口角を上げる。
「……はぁ?」

「な、なに言ってんの?し…シアワセ?」
「あぁ…それが『幸せ』ってやつだろう?」
急に酔いがまわったのか顔が燃えるように熱くなる。
シアワセ?え、俺ってシアワセなのか?
「え…???…そ、れ…て…」
「…お前、だいぶ酔っているな」
冷静になって考えようとしても一向に頭が回らない。ただ一つだけ出てきた答えがある。
「お、俺…ひょっとしてすげー恥ずかしいこと言った?」
「そんなことはない」
いや、恥ずかしい!俺のさっきの話、もしかしていわゆるノロケ話ってヤツ?
「…顔真っ赤だぞ…大丈夫か?横になったほうがいい」
「ぅわっ」
鬼道にひょいと抱き寄せられ、膝枕されていた。
「…鬼道クンの太ももかたい」
「贅沢を言うな」
「贅沢なんて言ってねぇよ」
鬼道はそっと俺の頭に手をのせる。俺は初めて風丸に対して罪悪感というものを感じた。どうしよう、抵抗しようか。
「髪…ずいぶん伸びたな」
鬼道はゆっくりと俺の頭を撫でる。風丸と違うリズム、手の動き。
「お前がどうしてるか…少し心配だったんだが…」
「んだよそれどーゆー意味?」
「……いや、特に理由はない」
なんだよそれ、素直に言えばいいじゃん…俺のことが好きだったってさ。
「俺はお前が心配だぜ」
俺が気づいてたことにすら気づいてないのかねえ?
「フッ…お前に心配されるとはな」
しょうがねえから膝枕くらいされててやるよ。優しい明王様からのクリスマスプレゼントだぜ。




5分もしない内に不動は眠ってしまった。話しかけなかった自分が悪いのだが。
俺は不動の頭をそっと持ち上げそのままソファに寝かせた。ソファの下に腰掛けてグラスに残っていたワインを飲み干す。ふと横を見ると、ずいぶんと無防備な寝顔があった。俺の気持ちを知っているくせに、何もされないと思っているのか。俺がキスをする勇気もないと見抜かれているのだろうか。というか、いまだに俺がお前に恋焦がれているなんて思ってもみないのだろうか。まぁ、あれから8年経っていることだしな。
「キス禁止」
後ろで佐久間の声がした。振り向くと佐久間が重たそうに体を起こしている。
「…佐久間」
「風丸からの伝言…というか言いつけというか…あー飲みすぎた」
不動の髪をもう一度撫でる。どうせなら、と思いサングラスを外す。不動の頬はアルコールのせいか赤みがかかっていた。
「もし風丸より先に俺が告白していたら…どうなっていたと思う」
佐久間は少し驚いていたが、どうやら真剣に考えてくれているようだ。
「……途中までは上手くいくけど鬼道がイタリアに行くと同時に別れて風丸に盗られる…かな」
「フッ…結局は風丸のものか」
「もしも…なんてお前らしくないぜ」
「本当だな…行動しなければなにも始まらない」
チュッ
「あ」
「クリスマスプレゼント、ということにしてくれ」
初めて触れる不動の唇は、妙に熱かった。

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メリークリスマス。
風丸が帰ってきたときの話も書きたいなあ
2011/12/24
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