リクエスト内容!→
鬼不→←風

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触れてはいけない。
必要以上に話すのもだめだ。

なぜならもうこれ以上…






風丸は俺を避けている。理由はわからない。嫌われているわけではないようだ、しかし明らかに避けている。
韓国戦前は明らかに俺を嫌っていた。目が合うと逸らし、話しかければ睨んできた。
そして少し前、韓国戦後、風丸と少しだけ近くなった時期があった。俺の部屋で夜遅くまで話しをしたり、2人で街を散策したり。
しかし今は違う。風丸が俺の部屋に来ることも、長々と話しをすることもなくなった。話しかければ笑って返してくる程度。

俺は何かしただろうか。
悪態をついたとか…そんなのいつもの事だ。風丸の気に障ることを言ったとか、例えば『女顔!』とか…そんなことさすがの俺でも言えない。
そういうことではない。あの態度は…まるで俺に後ろめたいことがあるかのようだ。俺といてはいけないと思っているかのような。

あ。

一つ、いわゆる『思い当たる節』というようなものを発見した。
鬼道。
俺は鬼道と付き合っている。それが風丸にバレたのかもしれない。

そうか。

同性と付き合っている。避ける理由としては十分だ。

なんだそうか。

そうだよな。

ズキン

ズキン



時計は夜中の1時を指していた。のどの渇きを感じて食堂に向かう。
冷蔵庫からペットボトルを取り出す。さすがに少し、真っ暗な宿舎は気味が悪い。
眠れない。

風丸 会いたい

ん?

ふと頭に浮かんだ思いを振り払う。同時に恋人への罪悪感が胸に広がる。

なんだ?俺、なんか変

カタ

物音に驚いて振り向くと、扉のそばに人影があった。薄暗い中、廊下の照明に照らされてシルエットが浮かんでいる。胸の中にふわっと暖かいものが湧きあがる。

「…風丸?」
「え、不動か?驚いた、幽霊かと思った」
暗くて顔は見えないが、きっと微笑んでいるに違いない。風丸は近づいてきて調理場の小さな照明をつける。俺は反射で目をつむった。
「あ、すまん!まぶしかったか?」
「へーき」
ゆっくり目を開けるとすぐ目の前に風丸がいて俺を心配そうに見つめていた。心臓が跳ねた。おそらく、驚いて。
「不動、眠れないのか?」
「ちょっと目が覚めただけ。風丸くんは?」
「ん?…ちょっと考え事」
「へぇ、悩み事かい?」
「ん…まぁな」
風丸の言葉は何だか少しよそよそしい。
前とは別人みたいだ。
宇宙人が来て風丸を操ってるみたい。それか風丸の皮を被った別のもの。

真面目で、おせっかいで、努力家で、嘘をつくのが下手で…
俺の冗談を真に受けて、照れたり、怒り出したりしてたっけ。
あのときの風丸には、俺はもう会えないのだろうか。

風丸は冷蔵庫を開ける。何か探しているようだ。
「ん」
後ろから、風丸の頬にそっとペットボトルを当てる。
「どーぞ」
「あ…サンキュ」
風丸は少しだけドリンクを口に含んだ。
「間接キス」
「んぐっ!?…お、おい」
あ。
「なんだ、やっぱり風丸じゃん」
「え?」
ふと、いつもの…正確には前の風丸が見えた気がして、俺はそれを見失うまいと、真っ赤になっている風丸の頬に触れた。
ペタ
そういえば、こんな風に俺から風丸に触れるのは初めてだ。
「や、やめろっ!」
聞いたことのない大声で風丸が言った。同時に俺の手から風丸が離れる。
手首にジンジンとした痛みを感じてから、やっと、振り払われたのだと理解した。
「あ」
「あ…」
ズキンズキンズキン
「すまん不動っ」
なんで?
変だ、泣きそう
「俺のことそんなに気持ち悪ぃ?」
声が震えていた。訂正したい。こんなの俺じゃない。
「違う!そんなわけない!」
風丸は強く否定した。でもそれで、何かが戻ったわけではなかった。
「なんで俺のこと避ける」
溢れそう、とはこういうことか。
手のひらに爪を立てて、涙をこらえた。久しぶりで、上手くできているかはわからない。
「すまん…俺が」
「俺が…なんだよ?」
「俺が悪いんだっ…!」
「…わかんねぇよ…わかるように」
「わかったら困るんだ!俺は…お前が」
「風丸」
近づこうとする俺の肩を風丸が掴む。両肩から伝わってくる風丸の震えが、俺の胸の奥を刺す。長い長い前髪で、表情は見えない。
「き…聞かないでくれ…俺が」
俺、こんなにお前のこと傷つけてたんだ?
「俺が、嘘つくの下手なの…知ってるだろ?」
風丸は苦しそうな表情で俺に笑いかけた。
『さよなら』
と、言われたみたいだった。
「知らねえよ…そんな」
「ごめん、ごめん」
あぁ、もうだめだ。
「なんなんだよ!はっきり言えよぉ!この女顔がぁ!」
思い切り叫んだ。風丸は、もう怒ってもくれなかった。ただただ困った顔で俺を見ている。
「すまん、でもこれ以上…これ以上お前のこと……!」



好きになりたくないんだ。



「おやすみ」
風丸の姿が見えなくなってから、すーっと一筋涙が頬を伝った。どんな感情で泣いているのか、ぐちゃぐちゃになった心ではわからない。

「おやすみ」
真っ暗な空間に言った。
END
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…お久しぶりです泣
最近いちゃいちゃしたのばっかりだったので今回このリクに挑戦!
風丸が鬼道と付き合ってるって知ったらどうするだろうってとこが難しく…最初はやっぱり鬼道とバトルして不動を奪い去る方向を考えてたんですが風丸って結局は平和主義者だよなーとか、だからって不動を諦めたりするかなーとか、…
で、鬼道との仲を応援したい気持ちと嫉妬とで頭のなかぐちゃぐちゃになって、距離を置くことを選択して、でもやっぱり好きで…っていう。うーん
そして相変わらず鬼道が出ない笑。うちのサイトで鬼道が活躍する日は来るのか!?

リクエストありがとうございます!
2011/08/19
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